家づくりでは、土地探しからスタートする人も少なくないでしょう。でも素人にとっては、条件も価格もまちまちな状況で、自分にピッタリの土地を見つけるのは、なかなかの難題です。そこで今回は、土地探しの基本ともなる「チラシ」をどう見ればいいのか?様々な項目について解説していきます。
理想の土地を手に入れるための探し方のコツ
土地探しは、住宅会社に依頼するケースなどもありますが、やはり町の不動産屋を訪ねるのが一般的。町やエリアをひとつに絞り込み、その地域で不動産屋を数軒あたると無駄がありません。
不動産屋を訪ねる前にやっておきたいのが「自分たちにとってのよい土地」の確認。予算、広さ、環境、交通の利便性などの具体的な条件を並べ、優先順位をつけます。そうすれば効率よく物件が見られ、相場もつかみやすくなり、自分の条件との落としどころも分かるようになります。
また情報を待つだけでなく、店にマメに顔を出して本気だと思わせる印象づけも大事。顔馴染みになれば、新情報をいち早く教えてくれる場合もあると聞きます。
不動産情報をラクに読み取れるようになろう
たくさんの売地の中から自分の条件に合ったものを選ぶためには、物件に関する情報が記載されたチラシが参考になります。
物件情報には「地目」「都市計画」「用途地域」「現況」などの項目があり、建てられる建物の主要な事項が書かれています。専門用語が多いですが、慣れると大体どんな家が建てられるのかすぐイメージできるようになります。
土地権利は所有権か(借地権や定期借地権もある)、宅地に指定されているか、接道内容は、建ぺい率や容積率は希望に合う数値になっているか…などしっかり読み取りましょう。
不動産チラシはココをチェック!
よく見かける不動産チラシの例から、チェックするべき項目を解説します。
• 最適用途/宅地
• 最寄り駅/□□駅
• 価格/3980万円
• 所在地/東京都△△市東町○丁目○ - ○
• 交通/JR 中央線□□駅徒歩15分
• 土地/面積…152.97㎡
私道…なし
• 法令上の制限/土地権利…所有権
地目…宅地 →Check①
都市計画…市街化地域 →Check②
用途地域…第1種住居地域 →Check③
建ぺい率…60%
容積率…200%
他の制限…高度地区 →Check④
• 備考/設備…都市ガス・公営水道・本下水
接道…東側4m公道 →Check⑤
現況…古家あり →Check⑥
引き渡し…相談
その他…建築条件なし
Check①:地目 全23種類。農地を宅地に転用できる場合も
その土地が宅地であるか、農地や山林であるかの区別を表示する項目。農地でも市街化区域内にある場合は、届けを出せば宅地に転用できる場合も。
Check②:都市計画 市街化区域であることが住宅建築の必須条件
すべての画像を見る(全1枚)都市計画法によって国土は以下(都市計画法による国土の分類)のように分類されます。私たちが暮らすほとんどの場所は「都市計画区域」の「市街化区域」。
また、行政側が自然環境を守る・残すなどの趣旨で市街化の開発を抑制するのが「市街化調整区域」で、原則として家は建てられません。どのように分類されているのかは、役所の都市計画課などで調べられます。
<都市計画法による国土の分類> ・都市計画区域 さらに3つに区分される→ 市街化区域、市街化調整区域、非線引区域 ・準都市計画区域 ・両区域外
Check③:用途地域 周囲の環境と大体の建物の規模を把握
都市計画区域内の市街化区域を用途によって12種類に分類したもの。大きく分けて「住居系」「商業系」「工業系」の3つがあり、それぞれ周囲の環境に沿い、建築可能な建物規模が示されています。
例えば第1種・第2種低層住居専用地域は、高さが10mまたは12mまで、建ぺい率(敷地に対してどれくらいの比率で建物が建てられるかを示したもので、建築面積を敷地面積で割った数値)は30~60%など、厳しい規制がかかります。
Check④:他の制限 高度地区、風致地区など制限があれば要チェック
都市計画法で定められた「地域地区」を記載。
例えば「高度地区」は都市計画法に基づき、建築物の高さが定められた地区、「風致地区」は建造物の建築や樹木の伐採に一定の制限が加えられている地区。このほか「景観地区」などもあります。
Check⑤:接道 前面道路は幅4m以上が条件。不足の場合はセットバック
建築基準法では、建物を建てるためには、敷地が幅員4m(地域によっては6mの場合も)以上の公道や指定された私道に、2m以上接していなければならないとされています。
ただし、幅員4m未満の道路でも、建築基準法が施行される1950年以前からあった道路で、役所が指定して道路と認めたもの(一般に「二項道路」と呼ばれる)については、道路の中心部から2m(地域によっては3mの場合も)の地点まで敷地を後退(セットバック)させれば、家の建築が認められます。
この場合、後退部分に家は建てられず、敷地面積は現状より狭くなります。
Check⑥:現況 「古家付き」は割安だが解体費用がかかってくる
「更地」「古家付き土地」など、土地の現況を記載。古家付きの場合、土地は割安で売られていることが多いです。古家には解体・処分費用がかかりますが、現況を見て、基礎部分に亀裂がないか、地盤に沈下がないかなど、地盤のよさを図るバロメーターになります。
いい家を建てる基本は、いい土地を見つけること。何を「いい」とするかは、人それぞれ違うので、まずは選ぶ基準を明確にすること、そして、情報をしっかり読み取る目を養いましょう。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
イラスト/三上数馬