家を建てる際には、法律によって建物の大きさや高さに制限があります。そして同様に、建物の内部にも様々な規定が。たとえば、床の高さ、窓の大きさ、天井高、建材などがその対象となっています。じつは、住む人の快適性や健康を担保するため、ルールがあるのです。自分の思うままに設計してもらいたいと希望しても、ハウスメーカーや工務店から「できない」と言われることがあるのは、ちゃんと理由があるのです。さっそく、内容を説明していきましょう。

目次:

建物の中には快適性のための制限がある!地下室は半地下仕様にすれば居住性がアップ住み手の健康のために、建材や設備機器にもルールがある

建物の中には快適性のための制限がある!

快適性を確保するための様々なルール
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明るい日ざしや風通し。心地よく暮らすためには、どちらも積極的にとり入れたいものです。そして法律によっても、快適性を確保するための様々なルールが定められています。以下の説明を上の図を参照しながらチェックしてみてください。アルファベット文字でそれぞれが対応するようになっています。

A:採光のため開口部は床面積の7分の1以上

採光に関しては、居室の床面積の7分の1以上の面積を持つ、採光に有効な開口部が必要になります(太陽光の差し込まない真北の開口部も含まれます)。なお、キッチンも居室に含まれますが、調理のみを行う小規模なものは、開口部不要の場合もあります。

B:天井の高さは2.1m以上

居室として必要な天井の高さは、十分な空気を確保するために、2.1m以上であると定められています。

C:床の高さは45㎝以上

1階の居室の床が木造の場合、居室の床の高さ(地面から床の上面まで)を45㎝以上とし、床下換気口の設置が必要とされます(床下がコンクリートの場合は除外)。

D:換気のため開口部は床面積の20分の1以上

居室は、床面積の20分の1以上、窓などの換気に有効な開口部を設ける必要があります。引き違い窓は窓面積の半分しか開かないなど、開閉方式で算定は変わってきます。開口部が足りない場合は、機械による換気設備を設けて不足分を補います。

E:地下室は床面積の20分の1以上の開口部を

地下の居室では、コンクリート壁に防湿・防水措置を行ったうえで、採光・換気のためのドライエリア(地下室を設ける場合に、地下室の外側に地面を掘り下げてできた屋根や天井のないスペースのこと)に面して、床面積の20分の1以上の開口部を設けるか、規定の換気設備または温度調整設備を設ける必要があります。

地下室は半地下仕様にすれば居住性がアップ

地下室を居室として使うためには、採光・換気のためのドライエリアを設置する必要が。ただし、居室を完全に埋め込まないで半地下仕様にするなど外気に接する開口部を設ければ、必ずしもドライエリアを設ける必要はありません。地上に出ている部分(この場合は地上から1m以下になります)から採光や換気を得られるうえ、工事費も削減できます。

このとき、居室の天井高さと埋め込み深さ(天井高さの3分の1以上)の規定を満たせば、地下室扱いになり、容積率の緩和規定(※)が適用されます。

※地下室の緩和規定:①天井が、地盤面からの高さ1m以下。②延床面積(地階を含む)の3分の1 までの広さ。③床面から地盤面までの高さが天井高の3分の1以上といった条件を満たせば、地下室は容積率算定上の床面積に含まれません

住み手の健康のために、建材や設備機器にもルールがある

木造住宅の建築現場

※写真はイメージです

心も体も健やかに、安心して暮らせる家にするために、守るべきルールがあります。

シックハウス対策による建材の制限

新築住宅に住んだ途端、めまいや頭痛、吐き気などを引き起こすシックハウス症候群。これを招く揮発性有機化合物ホルムアルデヒドは、現在、建材や塗料などへの使用が制限されています。国土交通省が定める住宅性能表示制度では、家を建てたときなど、要望すればホルムアルデヒドの室内濃度を確認できます。

24時間換気システム設置の義務

ますます高気密・高断熱化が進む現代の住宅。すきま風は減りましたが、半面、湿気や汚れた空気がこもりやすく、住む人の健康、さらに建物の寿命にも影響を与えています。そこで2003年に義務づけられたのが「24時間換気システム」の設置。機械換気には様々な方式がありますが、いずれも設計段階で検討・選択を。

火災警報器設置の義務

現在、新築・既存すべての住宅に設置が義務づけられているのが火災警報器。警報器には煙を感知するものと熱を感知するものがあり、法律では、火災の感知が早い前者の設置が義務づけられています。寝室や階段に取り付けますが、建物の条件や市町村によっては、ほかの居室・空間にも設置が必要になります。

たっぷりの光が差し込み、さわやかに風が抜けていく。そんな新居ができたら理想です。法律によって定められた基準をクリアしながら、プランニングを工夫して、快適な毎日を過ごせる住まいを手に入れましょう。

●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する

イラスト/三上数馬 写真/PIXTA