※写真はイメージですとくに小さな敷地の場合は、階数を増やして居住面積を確保したいところです。でも、住宅地を歩いていて、1軒だけ突出して高い家ってあまり見かけないですよね?そこにはいろんな理由がありますが、地域によって高さや斜線に決まりがあるのもひとつです。どんな制約があるのか?家づくりに役立つ、知っておきたいルールを解説していきましょう。
すべての画像を見る(全2枚)建物の高さは用途地域で決められる
家づくりを進めていくと、よく耳にする「用途地域」。どんなものかわかりますか?
都市計画法では、街としてのまとまりや住みやすさを保つために、市街化区域を「用途地域」によって分類。大きく住居系、工業系、商業系に分けられ、建てられる建物の種類や大きさが定められています。
住宅の高さに規制がかかるのも、この用途地域によるもの。特に低層の住居地域では、厳しい制限がかけられています。
第1種・第2種の高さは10mまたは12mまで
日照・通風・採光などを確保して、良好な住環境を保護するため、用途地域で第1種および第2種低層住居専用地域と定められている敷地の場合、10m(もしくは12m)を超える高さの建物は建てることができません。これを「絶対高さ」といいます。
ほかの用途地域には特に絶対高さによる制限はありませんが、斜線制限によっておのずと高さが決まってきます。
また高度地区といって、都市計画によって特別に、さらに建物の高さに制限が加えられる地区も。自治体ごとに厳しい条例を設けているところもあるので、役所に確認してみましょう。
高さに加えて斜線にも制限がかかる
高さによる規制以上に、建物のプロポーションに大きく影響するのが斜線制限といわれるもの。特に知っておきたい3つの斜線制限を解説します。上の図も振り返って確認しながら読んでみてください。
道路斜線制限
道路面の日照を確保するため、建物の高さを定めた制限が、道路斜線制限です。
都市計画区域内では、前面道路の反対側の境界線を起点とした、一定勾配の斜線範囲内に収めること。つまり、道路の向かい側から一定の角度(住居系地域は1対1.25、その他は1対1.5)の線を引き、それより外側に建物が出ないように建てる必要があります。
この場合、建物を道路から後退させると、より高い建物を建てることが可能です。
北側斜線制限
北側敷地の日照と通風を維持するための制限で、第1種・第2種低層住居専用地域と第1種・第2種中高層住居専用地域に適用されます。内容は、北側隣地境界線の真上(低層5m、中層10m)を起点に、南に向かい1対1.25の角度で引いた斜線内に建物を収める必要があるということ。
ただし第1種・第2種低層住居専用地域では、これに加えて、絶対高さの制限を超えた建物は建築できません。
隣地斜線制限
都市計画区域内で、第1種・第2種低層住居専用地域を除く地域に適用されるのが、隣地斜線制限。隣地の日照や通風などの環境確保が目的で、建物の高さを隣地境界線から一定以上の高さを起点とする斜線の範囲内に収めるというもの。起点となる高さは住居系地域で20m以上、それ以外の地域では31m以上です。
壁面を後退させると、その距離に応じて斜線制限が緩和されます。
周辺の日照を守る「日影斜線制限」も
斜線制限には、日影斜線制限もあります。これは、周囲の敷地の一定の範囲内に基準以上の日影をつくるような建築を認めないという規制です。
具体的には、一定の高さ以上の建築物(低層住居専用地域では軒高が7m超の住宅、あるいは3階建て以上の住宅)が、冬至の日の8時から16時まで(北海道の場合は9時から15時まで)の間、その場所に一定の時間以上続けて影を生じないように計画する必要があるというもの。
都市部に最近増えている3階建て以上の建物を計画する場合は、設計段階から十分に注意する必要があります。
高さ制限が10mと聞くと、一見、厳しい規制のようにも感じますが、一般的な3階建ての家を建てることは十分可能です。
ただし、斜線制限などにより、最上階に思うほど面積がとれないケースもあることを、覚えておきましょう。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
イラスト/三上数馬 写真/PIXTA