※写真はイメージです土地を隅々まで活用して、できるだけ広い家をつくりたい!そう思っても、法律によって土地ごとに建てられる家の大きさが決められていて、希望する広さが確保できないこともあります。ところが、建て主の味方ともいえる法律も。それが建築基準法の「緩和規定」。うまく活用すれば実際の面積以上の広さの家が建てられます。どんな空間をどういう条件でつくれば緩和規定が利用できるのか、さっそく見ていきましょう。
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用途地域による建ぺい率と容積率とは?地下室をつくって生活空間を広げる容積率に含まれない小屋裏で収納スペースをプラス建物に付属する車庫の大半は床面積に含まれない暮らしを豊かに広げる出窓にも緩和規定が角地に建てる場合は建ぺい率が10%緩和される用途地域による建ぺい率と容積率とは?
緩和既定のお話をする前に、まず知っておきたいのが「用途地域」。土地は、環境保全や防災の観点から12の「用途地域」に分類され、それぞれ建ぺい率と容積率の上限が設定されています。
建ぺい率は敷地に対してどれくらいの建物が建てられるか示したもの。これに対して容積率は、敷地面積に対する延床面積の割合になります。
- 建ぺい率=建築面積÷敷地面積
- 容積率=延床面積÷敷地面積
緩和規定は、この容積率や建ぺい率をおまけするというもの。いくつかの条件をクリアする必要がありますが、たとえば地下室や小屋裏(ロフト)、建物に付属する車庫などは、容積率の範囲を超えてつくることも可能です。
地下室をつくって生活空間を広げる
かつて地下室の床面積は延床面積に含まれていましたが、1994年の建築基準法の改正で規制が緩和。一定の条件を満たせば、地下室は容積率算定上の床面積に含まれなくなりました。その条件は以下のとおり。
①地階の天井は、地盤面からの高さが1m以下であること(1mを超えて地表に突き出ていないこと)。
②地階は延床面積(地階を含む)の3分の1 までの広さであること。
③床面から地盤面までの高さが天井高の3分の1以上あること(室内空間の高さの3分の1以上が地下にあること)。
④地下室は住宅の一部であること。
例えば、
敷地:100㎡
建ぺい率:50%
容積率:100%の場合
↓
地上部分:1・2階合わせて100㎡
地階:最大50㎡までOK
つまり、地下室を設けることで最大1.5倍、家を広くすることが可能というわけです。
容積率に含まれない小屋裏で収納スペースをプラス
空間を有効活用できる小屋裏(ロフト)にも緩和規定があります。小屋裏や中2階は、収納空間として活用するなら、容積率算定上の延床面積に含まなくてもOK。以下がその条件になります。
①天井高は1.4m以下であること。
②直下階の床面積の2分の1以下の広さであること。
③階段は可動式(はしごなど)とする。
建物に付属する車庫の大半は床面積に含まれない
建物に付属する車庫の場合、建物全体(車庫を含む)の床面積の5分の1以下であれば床面積に算入しなくてもよいとされています。
例えば:
1階:40㎡
2階:40㎡
車庫:20㎡
この場合、床面積の合計が100㎡。その5分の1 である20㎡以下なら不算入で大丈夫。
また、地下室の緩和規定との併せワザで、車庫はさらに広くできます。
先ほどの例で、さらに20㎡の地下室をつくった場合、
床面積の合計120㎡× 20%(5分の1)= 24㎡まで不算入で車庫がつくれます。
暮らしを豊かに広げる出窓にも緩和規定が
出窓は、壁から張り出したスペースのぶんだけ室内を広く感じさせてくれます。大きすぎる出窓は床面積に算入されますが、次の条件を満たせば不算入に。
①室内の床面から窓台の高さが30㎝以上であること。
②外壁より張り出している部分が50㎝未満であること。
③室内側から見た出窓の面積の2分の1以上が窓であること(出窓部分を収納に使うのは不可という意味)。
角地に建てる場合は建ぺい率が10%緩和される
建ぺい率の緩和でよく知られるのは「角地緩和」。角地に家を建てる場合、用途地域で定められた建ぺい率に10%加算した大きさまで建てられます。つまり、もとの建ぺい率が40%なら50%に。ただし例外もあるので、詳しく知りたい場合は行政に確認してください。
また、都市計画法で定められた防火地域にコンクリート造や鉄骨造の耐火建築物を建てる場合も、建ぺい率を10%加算できます。
たとえ小さな敷地でも、あるいは容積率が厳しい地域でも、緩和規定を上手に利用すれば、暮らしのスペースを広げることは可能です。プランニングで有効活用して、ワンランク広い家を目指しましょう。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
イラスト/三上数馬、板谷和佳子 写真/PIXTA