千葉・流山市の池森さんは4人家族。妻の祖父母から引き継いだ古家を建て替えて暮らしています。設計したのは遊空間設計室の高野保光さん。「仲がよくてアクティブな池森さん一家にはオープンな家が似合う」と全体に開放的なつくりに。共働きで子育てと仕事を上手に両立しながらも、すっきりとした空間をキープできる秘訣は間取り、という池森家を見せていただきました。
すべての画像を見る(全16枚)コミュニケーションが取りやすいスキップフロア
祖父母から譲り受けた家に住んでいた当時はとても湿気がひどかったそう。建て替えに際しては、東南角に庭を広く取ることで日当たりと通風に配慮しています。
建物は玄関から奥に向かってメガホンのように台形に広がっていることで、実際よりも奥行が深く感じられるつくりになっています。
室内はスキップフロアでつながれていて、玄関ホールから半階上がるとLDK、さらに半階上がったところに子どもスペースを兼ねた家族室と寝室を配置しました。上の写真はLDKから半階下の玄関と半階上の家族室を見たところ。
LDの天井高は最高で約3.8mにもなります。天井を下げたキッチンの上部は、子ども用のロフトをつくりました(写真の右上)。
キッチン正面に見えるのはお茶を楽しむこともできる半屋外のインナーデッキ。その下は洗面室です。洗面室の様子がガラス越しにわかるのは、スキップフロアならでは。
「キッチンから、洗面室で歯磨きをする子どもの様子が見えるんです。下の子は時間がかかるので、声掛けができるので助かりますね」(妻)。
ロフトの向かい側にあるのは穴ぐら風に設えられた夫の書斎。LDからチェストを使って出入りします。ほどよくこもれる感じがとても落ち着くとか。
この家に独立した子ども室はなく、家族室の一角を子ども用スペースにしています。
床レベルの変化によって緩やかに区切られているので、仕事から帰ったわずかな時間でも家族間のコミュニケーションはきちんと取れるそうです。
使い勝手に配慮した大容量の収納庫
玄関に設けられた大容量の収納スペース。ここには靴収納のほかに上着掛けも設置しました。通勤用のカバンや傘、物干し竿なども様々なものを一手に引き受けるスペースです。
階段の下には玄関ホールから数段降りた大収納庫が。半階分高いLDKの床下全体を使っています。
収納の出入り口は階段の陰にあり、建具が壁と同じ白色ということもあり、玄関から見ても目立ちません。
床下収納の天井高は1.4mで、長男が立って歩けるほどの高さです。自由に動けるので、物の出し入れもラク。
床下収納の広さは、なんと約12畳。奥のほうには季節外の家電やたまにしか使わないアウトドア用品を置き、手前には普段着る服や子どもたちの学用品などもしまっているそう。
何度も物を出し入れするのに最適なレイアウト。まさに「生活の要」になっているとか。
出勤前にすべてが片付く家事動線
床下収納の近くには洗濯機とガス乾燥機があり、乾いた洗濯物を畳んですぐに床下収納へ。この合理的な動線を生かし、妻は出勤前に家事を済ませていくそうです。
「起きたらタイマーで洗い上がった洗濯物を乾燥機に移し、朝食・お弁当・夕食の支度。その間に乾燥が終わるので、取り出して階段に腰掛けて畳み、床下収納にしまえば出かける前にすべてが片付くんです」(妻)
洗面まわりで使うものは、造作した奥行の浅い収納棚に。この扉の内側にはミラーが取り付けられていて、収納棚を開けると洗面台正面に固定してあるミラーとつながり、広い鏡面として使えるようになっています。
キッチンの背面収納もオリジナルで造作したもの。食器やカトラリー類も、吊り棚をフルに活用して取り出しやすく整理。
扉の裏には自作「ポケット」を取り付け、小物も取り出しやすく収納。
分別ゴミ箱や調理家電もキッチン背面にすっきりと収まりました。
通気性と視線の抜けを考慮して、寝室のWICにはあえて扉を設けませんでした。窓の外に設けられたルーフデッキは、布団干しなどに活躍します。
忙しい夫婦を助ける家事動線計画や様々な工夫と極力仕切りをつくらない間取り。この家での暮らしにゆとりを感じながら、家族が自然なコミュニケーションをとれる秘訣は、その設計力によるものなのかもしれません。
設計/高野保光(遊空間設計室)
プロデュース/ザ・ハウス
撮影/Takuya Yamauchi
取材/松川絵里
※情報は「住まいの設計2019.12月号」掲載時のものです。