設計事務所に勤める辻孝祐さんが家族3人で住むのは、築48年のヴィンテージマンションです。「なんて素敵なデザインなんだろうと思ってから3年。憧れ続けたマンションに、今、家族で暮らしている。幸せに思います」と孝祐さん。なかなか空きが出ない人気物件でしたがタイミングよく64.00㎡の物件が購入でき、工事費900万円(税・設計料込み)でリノベーションを行いました。リノベにあたって大切にしたのは「思い出づくり」だったそうです。

寝室
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風通しがよく自然光に包まれる暮らしディテールも思いを込めてチョイス

風通しがよく自然光に包まれる暮らし

中庭

物件は都心から電車で30分ほど離れた、閑静な住宅街に建つ中規模の集合住宅。昭和を代表する名建築家・内井昭蔵氏が設計したものです。建物はもちろん、緑豊かな中庭も大きな魅力のひとつになっています。

ダイニング

「家づくりの日々を家族の思い出に残るようなものにしたい」と思った孝祐さんがリノベを依頼したのは、施主参加型リノベを提案するハンディハウスプロジェクト。「妄想から打ち上げまで」をコンセプトとする設計・施工のプロ集団です。

孝祐さんは照明などのディテール、妻の寛子さんは全体のイメージを考え、床張りや壁塗りには長男の結斗くんも参加したとか。「息子の3歳の誕生日には、まだ工事中の現場でみんなでケーキを食べたり(笑)。ハンディハウスプロジェクトは家づくりだけでなく、思い出づくりを手伝ってくれている感じがすごくありました」。

寝室

L型のLDだった空間には新たに寝室を設け、腰壁で仕切る形に。窓と同じサイズの内部開口をとることで、風通しと採光に配慮しています。プライバシーを確保したいときは、ロールスクリーンを下ろすそう。

リビング

既存では寝室だったところを子ども室とし、寝室と同様に東西の窓と同じサイズの開口を設置しました。「子どもが大きくなったら間仕切りを入れて個室にしてもいいかな。家族のスタイルに合わせて柔軟に」(孝祐さん)。

子ども室

子ども室には、将来、親子で並んで作業できるようにと長机を設けています。でも今は、結斗くんは「キリンさんの机」がお気に入りの様子。机は辻邸のリノベーションを担当したハンディハウスプロジェクトの加藤渓一さんがプレゼントしてくれたものです。

キッチン

キッチンには南と東に開口があって明るいだけでなく、目の前を遮る建物もないため、見晴らしも抜群。「忙しい朝も明るい日差しを浴びてシャキッと過ごせます」と寛子さん。

オリジナルキッチンは寛子さんがフランス留学時に住んでいたアパルトマンにならってⅡ列型に。

キッチン

1日分の食器が入るASKOの食洗機や大容量の収納、キッチンに置いた洗濯機は、家事のコンパクト化に役立っているそう。

ディテールも思いを込めてチョイス

LD

リビングとダイニングにはそれぞれ正方形の窓があり、その間に、出窓のように外側に飛び出る形の収納があります。居住空間が広くとれるようにと考えられた、このマンション独特の設計です。

リビング

LDKの床に採用したのは、ナラ突板。一般的には縦向きに張るところを、あえて横に張ることでアクセントにしました。

玄関

玄関収納はラワン材で造作。材の色が産地によって異なる点を生かし、遊び心のあるデザインに仕上げました。リビングのテレビボードも同じデザインで造作したものです。

トイレ

風呂、洗面、トイレなど水回りの配置は変えていませんが、色や床材などディテールで自分たちらしさを表現しています。トイレのドアは、既存をグレーに塗装しました。

洗面

洗面所はインダストリアルな雰囲気。ホーローシンクは、バウハウス・デッサウの寄宿舎などヨーロッパのショップや工場などで使われているオランダ・クアンテックス社のもの。壁面のタイルは地下鉄をイメージしています。

リノベから1年経っても「この床は僕が張ったんだよ」「ここの色塗りは大変だったよね」など、家にまつわることとなると、今も家族の会話がはずむといいます。「思い出づくり」をしたリノベ空間では、今日も新たな思い出が誕生していることでしょう。

設計・施工/HandiHouse project
撮影/水谷綾子
※情報は「リライフプラスvol.34」取材時のものです