建築家の本間大吉さんによる設計で建てられたY邸。非日常的な空間から見えるのは、まるでギャラリーのようなガレージに納まる愛車・ポルシェです。できるだけ生活感を省き、ホテルのように豊かな質感を持つ本物の素材に囲まれて暮らしたいというYさんの願いが見事にかなった新居になっています。
すべての画像を見る(全6枚)プライバシーを確保しつつ借景を楽しむ
Y邸が建つのは千葉県千葉市の臨海部にある住宅街です。南北2面が道路に挟まれる形の敷地で、南面の道路の先には緑豊かな公園が広がっています。
プライバシー確保のために敷地をRC造の塀で囲みながらも、公園の緑は眺められるように、開口部は南面に集中させています。
敷地の北側には愛車を納めるガレージ、テラスを挟んで南側には2階建ての住居スペースを配置。LDKは南北が全面開口となっていて、愛車と公園の緑の両方が楽しめるようになってます。
Y邸が非日常的な空間と感じるのは、Yさんの住まい方だけでなく、天井や壁に出っ張りやへこみなど無駄な線が見当たらないのも理由のひとつでしょう。
緑だけが見えるよう周到にプランニング
延床面積は160.12平米。玄関ホールから階段にかけてのゆったりとした空間が商業建築や美術館を思わせるつくりです。奥の緑にまで視線が伸び、面積以上の広がりも感じられます。
玄関ホールの東側には、夫の書斎があります。本格的なDJブースを備えていて、音はLDKのスピーカーからも出せるようになっているそう。
洗面・浴室は2階の東側にあり、南面のみに開口を設置。ここからも公園の緑だけが目に入るように設計されました。
「要望どおりホテルのロビーのような、無駄な線がまったくない美しい空間だけでも満足なのに、見えるものがきれいな緑とお気に入りのクルマだけ。とても豊かな気持ちで暮らせます」とYさん。
美しい愛車、隣地の緑など美しいものだけを愛でながら暮らせる家。ガレージをギャラリーに見立て、建主の美意識を具現化する巧みな手法が見事です。
設計/本間大吉設計事務所
撮影/石田 篤
※情報は「住まいの設計2019年10月号」掲載時のものです。