神奈川県鎌倉市のM邸は、築40年の民家をリノベーションしたもの。高台に位置し、南側には庭、北側には古都の緑が広がるという環境も大きな魅力です。けれどもMさん夫妻が購入した時は、これまで何度も行われてきた増築のために、室内は暗く風通しも悪い状態。設計を依頼した石崎建築設計・石崎哲也さんには眺望を生かせる空間を希望したそうです。
すべての画像を見る(全3枚)LDKを2階に移し、材料選びにもこだわる
設計の石崎さんは、まず増築部分を整理。1階南側の増築部はセットバックして広縁に、北側にあった物置はフレームだけを残して2階の濡れ縁としました。
そのうえで、リビングの窓から緑が楽しめるように、1階にあったLDKを2階に移動。
LDKは既存の柱梁を表しにし、その素材感とマッチするように天井には杉板荒材、床には足場板古材を選びました。その結果、コスト面に配慮しながら、古い家ならではのたたずまいを残した空間が仕上がりました。
1階には寝室やシアタールーム、和室、水回りを配置。Mさんの「旅館のような浴室を」という希望は、陶製の置き型浴槽で実現しました。
「リビングとダイニングとの境にある段差に腰掛けて、北側の窓から緑を眺めるのがお気に入りです」とリノベに大満足の様子のMさんでした。
中古住宅をリノベーション前提で購入するのはもはや常識。この家の場合、古家のマイナス面を建築家が再構築するとこうなります、という見本のようなリノベです。
設計/石崎建築設計一級建築士事務所
撮影/山内紀人
※情報は「住まいの設計2019年10月号」掲載時のものです。