長野駅から車で30分。市街地を抜けて急な上り道を走ると、景色や空気がガラリと変わります。そこは標高1080m の飯綱山麓。「山の景色を見ていると、雄大な気持ちになりますね」と、顔をほころばせるのはこの地に暮らす西垣内章さんです。章さんは兵庫県宝塚市、妻の浩子さんは愛知県名古屋市の出身ですが、大好きな長野でログハウスを建て、退職後の第二の人生を送ることを決めました。どのような毎日を過ごしているのでしょうか。おふたりの暮らしを少しのぞいてみましょう。
すべての画像を見る(全16枚)家づくりを検討するも、難航した土地探し
長野市飯綱高原で、夫婦仲睦まじく暮らす西垣内さん夫妻。この地にログハウスを建てて暮らし始めたのは2018年だといいますが、実はこの土地は11年前の2007年に購入したもの。
というのも、西垣内さん夫妻は長野に通算15年住んでいるのです。
話は十数年前に遡ります。食品メーカーの営業職で転勤族だった章さんは、学生時代からスキーバスの添乗員として通っていた長野への勤務を希望。アウトドア好きの浩子さんも喜んで同行しました。長野で子育てをし、友人も多くできました。
当時、夫妻は市街地の社宅暮らし。
この土地との出会いは、新聞にはさみ込まれていたチラシ広告だったといいます。いつか家を建てて住むかもしれないし、値上がりしたら売ってもいいと考え購入したそうです。社宅暮らしだった間は、この土地を家庭菜園として利用していました。
ところが、土地を買った3年後の2010年に章さんが岡山県に単身赴任。その後も転勤生活は続き、最終的に家族は兵庫県宝塚市で合流します。
そして2011年、早期退職を機に、章さんの実家の宝塚市の近くで家を建てようという話が持ち上がります。しかし、土地を探したけれど思うような場所が見つかりません。
実は浩子さんが望んでいたのは薪ストーブのあるログハウス。「学生時代にログハウスのペンションに泊まって以来、なんて素敵なんだろうと憧れていました」。けれど、薪ストーブの排煙が近所迷惑になったりするし、山小屋のような家は市街地には建てづらい。しかも兵庫県は地価も高く、中心地から2時間半ぐらい離れた場所でないと、思うような土地がありませんでした。
「マンションでいいじゃないか」と章さんが出す妥協案に、浩子さんは頑として譲りません。「土地探しのことで夫婦仲が険悪になりかけました。最後の最後に『長野にするか』といったら、妻が涙をはらはら流して喜んだのですよ」(章さん)。
夫妻の好きな長野で、夢だったログハウスを
2018年、夢だった薪ストーブのあるログハウスを、11年前に購入した長野の土地に建てることに。ログハウスの設計・施工は、TALO大阪・兵庫ログケイジュに依頼しました。
フィンランドから部材を輸入する本格的なログで、デザインのバリエーションが豊富、そして自由設計が可能だったことが決め手になりました。施工には長野まで職人を派遣してもらったそうです。
こちらが木の香りに包まれた室内。
間仕切り壁が少ないワンルームのような家だから、人の気配がよく伝わります。「僕の昼寝のいびきがリビングまで聞こえてしまうのが困りもの」と章さんは笑います。
浩子さんのこだわりはなんといってもキッチン。
料理教室を開くことを念頭にオーダーしたのは、ウッドワンのフレームキッチンでした。ダイニング側にはセンスの良い器がぎっしり並びます。リビングの一角にはオーブン料理もできる薪ストーブを設置しました。
一方、章さんには秘密基地があります。
それはスキップフロアで上がるロフト。パターの練習をしたり、ひとりになりたいときにこもれる場所でもあるんです。
「まだまだこれから」。より健康的になった長野での暮らし
60代の章さんと50代の浩子さん。ここでの暮らしはどうなのでしょうか。「長野に移住してこんなに働くとは思いませんでした。こちらでは年配者でも仕事があるんですよ」(章さん)。
章さんは冬場にはスキー場のリフト係、夏はゴルフ場の整備係として働くようになりました。多い日は1日に3万歩も動き回るそうです。食品メーカーの営業職だった現役時代に比べ、体重も体脂肪率も下がったといいます。
栄養士の免許を持つ浩子さんは、長年の夢だった料理教室を自宅で始めました。その名も『山ねこKitchen』。
料理教室がない日は、冬はスキー場のレストラン、夏はゴルフ場のキャディとして働きます。
この日は、友人を呼んで浩子さんお手製の料理でおもてなし。地場産のリンゴのピザ、長野郷土料理のおやき、笹寿司などがテーブルに並びます。
ふたりが移住して仕事をするようになって驚いたのは、長野では人生の先輩たちが生き生きと元気に過ごしていること。「職場では男性も女性も、70代の人がガンガン働いています。私なんかまだ小僧ですよ(笑)」。
章さんは家でも雪かきや土木仕事、さらに、洗濯物干しやゴミ出しなどを担当しています。休みの日はバイクを駆って遠出することも。「ここに住むようになってから生命力が上がったような気がします」。
日々忙しく過ごしながら、夫婦以外に家族も増えました。西垣内家には、保護猫のボランティアをしている浩子さんが引き取ったりした7匹のネコがいます。
仕事のほか、スキーやゴルフなど、共通の趣味も一緒に楽しむ夫妻。毎日が忙しく、とってもアクティブ。まだまだこれからというふたりの第二の人生はのんびりした田舎暮らしとは対極のようです。
※情報は「住まいの設計2019年12月号」掲載時のものです。
料理教室『山ねこKitchen』
取材/平山友子 撮影/林 絋輝
メーカー/TALOインターナショナル