兵庫・西宮市の実家を二世帯住宅に建て替え、妻の父と同居することを決めたTさんご家族。設計を依頼したのは、「建物のたたずまいから素材使い、細部にいたるまで思い描く家が具現化されていた」と惚れ込んだマニエラ建築設計事務所です。互いに気兼ねなく暮らせるよう、世帯ごとの動線は完全分離させたプラン。住まい中心の吹き抜けを介してすべての部屋を見渡せる間取りで、吹き抜けは二世帯をつなぐ役割も担っています。
すべての画像を見る(全11枚)外とつながり、視線は遮るプラン
T邸の敷地周辺は傾斜地。隣地の地盤から数m高く、2階の窓からは大阪市内を一望できます。一方で、1階は3方を隣家に囲まれていました。
プライバシーを確保しつつ開放感をもたらすため、1階リビング南側に水盤のあるテラス、東側にデッキを設けて外とのつながりを感じられるように。住まい中心にある大きな吹き抜けも風や光を住まいに取り込み、開放感を感じさせてくれます。
リビングダイニングはコンパクトですが、開口部にフルオープンのサッシを採用しているため伸びやかな印象。一方で目隠しになる塀やタープ、植栽などをランダムに配しているため、周囲の視線を気にせずリラックスできます。
気持ちのいい光が差し込む吹き抜け上部には何も張られていないため、階段は外部空間。年に数回は高圧洗浄機で大掃除しているそう。
生活感を隠したモダンなキッチン
白とグレーでシンプルにまとめたLDKの主役は、杉本実型枠のコンクリート壁とアメサラの無垢材を組み合わせてオーダーしたキッチンカウンター。モダンなデザインにすることで、素材感を引き出しています。
家全体を見渡せるこの場所は、妻の日常の定位置。娘も料理が好きで、一緒にカウンターに立つことも多いそう。
「生活感を出したくない」という妻の希望で、キッチンは設備を充実させつつ随所に隠す工夫を凝らしました。食洗機やオーブンはキッチンにビルトインし、生活感を感じさせる冷蔵庫はマットな黒板塗料を塗ってインテリアのように見せています。
パントリーを設けない代わりに、背面に大容量の収納を配置。キッチンカウンターの一部にも食器収納スペースをつくることで、水平方向に広がりのあるデザインをキープしました。
「お客さんに出すときに揃っていないと嫌なので、豆皿も10組まとめて買ってしまうんです」と妻。そんな大量の食器も、食洗機横の引き出しにすっきりと収納しています。
キッチン近くの「情報ステーション」にはLDKで使うものを分類して整理し、ケースを統一してすっきりと。洗濯機はウォークインクロゼットとキッチンの間に設置。廊下を挟んで浴室と洗面もあり、家事に便利な動線です。
自然光が降り注ぐ白で統一したバスルーム
庭を眺めてリラックスできるバスルームは、洗面室から庭まで一直線に視線が抜けるレイアウト。浴槽の台とモルタルの洗面カウンターを造作し、一体感のあるデザインにしています。コンパクトながら、バスコートへの視線の抜けや洗面室との間仕切りをガラスにすることで、面積以上の広がりを感じさせる空間です。
さらに廊下を挟んでウォークインクロゼットにアクセスできるので、身支度もスムーズ。
洗面室の背面にも、壁にぴたっと収まるよう設計された「情報ステーション」が。必要なものが種類ごとすっきりと収納されています。「大江さんが手がけた物件で見て気に入って」という夫のリクエストで採用したレインダンスハンドシャワーなど、水栓はモダンなハンスグローエの製品で統一しました。
デザインを重視し収納上手な妻と、施工に興味がありメンテナンス担当の夫。それぞれ違う着眼点で家を楽しみ、丁寧な暮らしを楽しんでいます。
設計/マニエラ建築設計事務所
撮影/川隅知明
※情報は「住まいの設計2019年4月号」取材時のものです