都内城南エリアの物件を10件余り内覧したYさんが住まいに決めたのは、渋谷区広尾にある築44年のヴィンテージマンション。契約時の状況のまま引き渡す「現状有姿」という条件だったため、立地の良さに対して物件価格は抑えめでした。個別セミナーで好感触だったnu(エヌ・ユー)リノベーションに依頼し、工事費1315万円をかけてつくり上げたのは、個性的なキッチンが主役の空間。大満足の仕上がりのキッチンで、料理好きの夫の料理のやる気がさらにアップ。料理を存分に楽しめる住まいを手に入れました。
すべての画像を見る(全13枚)躯体表しの天井×温かみあるインテリアが調和
Y邸の大きなLDKのセンターにあるのは、夫主導でつくられた木の温もりが感じられるアイランドキッチン。無垢カラマツ材のフローリング、天板、書棚、カラフルなクッションなどの温かみのあるインテリアを、コンクリート現しの天井がクールに引き締めています。
キッチン横にある大きな書棚は、キッチンとPCコーナーをゆるくゾーニングする役目も。背板がなくフレームのみなので、書棚越しに会話することもできます。
夫主導でつくったオリジナルキッチン
家づくりで最も力を注いだキッチンは、グラフィックデザイナーである夫が主体となって、デザインから仕様までこだわりました。
夫は一時期カレーづくりにハマり、それを機に幅広く料理に親しみ、今では日々の食事をつくる腕前の持ち主。「デザイン的には、テーブルを兼ねられる木の天板のアイランドにしたかった。そこで、トッピングするように据えられる独立型シンクとレンジはトーヨーキッチンのPUTTONを使いたい、とほぼ決めていました」と夫。
ダイニングテーブルもありますが、たいていはキッチンカウンターで食事をとっているのだそう。
天板には強度と耐水性に優れた集成材を採用。あとから天板に置いたかのような高さのあるシンクのおかげで水はねも少なく、安心して木のキッチンを実現できました。
カウンターの腰壁はモルタルで仕上げ、ステンレスや木とのコンビネーションで居住空間に融和しています。
また、キッチン背面はオープンで取り出しやすい収納を中心に配置。おもに妻がパンを焼くのに使うミーレのオーブンを組み込んでいます。
配管や梁を巧みにかわして棚を設置。カウンターの表面には後付けでアクリル板を貼りました。また、シンク下には出し入れしやすい「ペリカンボックス」を重ねて置き、雑貨などの収納に活用しています。
キッチンは夫がメインで使うため、高さはやや高めの85センチ。シュミレーションをして夫妻ともに使いやすさを確認しました。また、コンロはガスもIHヒーターもどちらも選択可能でしたが、夫妻は直火を使いたいとガスをチョイス。
全面タイル貼りのこだわりの浴室
キッチン同様に気合を入れてつくったという浴室は、白いタイルが隅々まで精緻に貼られています。浴室のレイアウト変更により、バスタブは既存よりも広いものを設置することができました。シャワーからの水流が扉にかからないように、シャワーの設置位置を工夫するという細やかな配慮も。
浴室と同空間にある洗面室も、同じくタイル貼りに。そして、浴室の扉は分厚いステンレスで造作しました。「家でいちばんお金がかかったところかも(笑)」と夫。
壁一面を引き戸にして可変性のある個室に
玄関土間の左側は独立した洋室でしたが、壁全体を引き戸に変更。全開すると土間とひと続きのホール空間に早変わりします。内部には間仕切りを付け、背後をクローゼットにしました。
引き戸を全閉すると、壁面のようにスッキリとした納まりに。
洋室の隣にある寝室の扉も引き戸。南側に大きなクローゼットを設け、寝室と廊下の二方向から出入りできるレイアウトにしています。
シューズクローゼットは梁まで届く大容量。ドアを開けたとき視界に入らない位置なので、オープンな棚にして通気性と出し入れのしやすさを優先しました。
また、玄関ホールにあるトイレは位置は既存のままですが、内装と設備はリフレッシュしています。狭い空間なので、タンクレスの便器を使用し、コーナーに手洗い器を設置することでスッキリ感を演出。
要望を叶えたキッチンはますますやる気を上げてくれたようで、夫は妻が職場に毎日持参する弁当作りも担当しているのだそう。「朝つくるのを見ていますが、昼にふたを開けて食べるのがまた楽しみ。温かくてありがたいです」と妻はうれしそうに話してくれました。
設計・施工 un(エヌ・ユー)リノベーション
撮影 山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.16」取材時のものです