中古マンションの購入・改修を予定していた和田さん夫妻は、仲介業者がたまたま案内してくれた団地で、環境のよさや、築年数が古くても十分改修が可能であることを知り、団地リノベに方向転換。東京都小平市にある、公園に隣接した緑豊かな築30年超の団地の一室を2080万円で購入しました。そして妻の義兄にあたる日尾俊昭さんに設計を依頼。分離発注を行うことで工事費を400万円(設計料込)に抑え、既存を生かしながら、自分たちらしい住まいをつくり上げました。
お花見も楽しめるリビングダイニング
すべての画像を見る(全10枚)JR中央線の国分寺駅からバスでアクセスするこの団地は、公園に隣接しながらゆったりと建っている、自然豊かなシチュエーション。
「鳥のさえずりも一年中聞こえて、幸せな気持ちになります」と妻。
そんな和田邸は、角部屋ならではの広がりのある眺めが自慢。リビングダイニングに面したバルコニーから手を伸ばすと桜、室内からも窓一面が満開の桜、という癒しの眺望が楽しめます。
そんなLDKは、間取りはそのままで内装仕上げを変更した程度ですが、大幅なイメチェンをすることに成功。ブルーの塗装が目を惹くキッチンは廊下側とも通じていて、玄関、浴室との動線が良好です。
和田夫妻は既存をフル活用してDIYを楽しむ一方で、新築以来一度も換えていない給水管を新しいものにするなど、インフラの変更を重視。
「まずは極力既存を生かして、あとでできることはお金が貯まってからにしようと決めました」と夫は話します。
床は憧れていたという無垢フローリングを採用しました。夫妻はともに会社員で、妻は週末だけ都内某所でカフェを開いているそう。
リビングダイニングの片隅には白木の棚を置いて、多肉植物などの植物コーナーに。中央の白い花は、金属の焼き菓子の型に活けています。
既存のキッチンに扉材をDIYで取り付け、壁をさわやかなブルーに塗装してリフレッシュ。シナ合板をホームセンターでカットしてもらい、金具で取り付けています。
吊り戸棚の一部は既存の扉を撤去したことで、道具の出し入れが快適になりました。
お花見シーズンになると、窓の向こうは一面の桜。新緑や紅葉の季節も絶景なのだそう。ベランダでは、今後いろいろな野菜やハーブを育てる計画もあるそう。
また、リビングに隣接する和室の仕上げは既存のまま。前住者が床の間を押し入れに変更してくれたおかげで、収納力が向上しています。
奥まで光が届いて明るい廊下
玄関収納は場所と大きさはそのままで、扉の位置、床の仕上げ、内部の棚などを変更しました。玄関から土間続きでそのまま入れるレイアウトなので、靴をはじめアウトドア用品の収納・出し入れに重宝しているそう。
寝室と予備室は床以外は既存のまま。「これから壁など徐々にDIYで変更していく予定です」と夫。個室や水まわりが集まる廊下は、リビングダイニングからの光がたっぷり注ぎ、明るい印象です。
水まわりは既存も活用してうまくコストカット
洗面は設備も内装も一新。洗面ボウルは実験用シンク、水栓は水まわり設備機器のネットショップ「パパサラダ」で見つけたクラシカルな機種を採用しています。武骨なガス給湯器はパンチングボードで覆って目隠しをしました。
トイレの便器は比較的新しかったため既存のまま。壁は壁紙をはがして躯体現しにしました。
浴室は在来工法でのリフォーム。壁・床ともにタイルを貼り替え、バスタブも変更しました。和田さん夫妻は工務店に工事を一任せず、職人に個別に依頼する分離発注方式でリノベーションを行いました。
分離発注は工務店より経費を下げることはできますが、施主のやることが増えるので、一長一短。でも、夫妻の「一緒につくりたい!」という情熱があったからこそ、実現できたのでしょう。
四季の移ろいを感じるこの部屋で、自分たちらしくDIYを楽しみながら暮らす夫妻でした。
設計/日尾俊昭一級建築士事務所
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.15」取材時のものです