娘が大人になるまでの貴重な時間を大切にしたい、日本の四季を感じてほしい、と考えていた西川さんご夫妻。目黒区や文京区などでも物件を探し、最終的には千代田区一番町に建つヴィンテージマンションの一室を購入。リノベーションはオフィス・エコーに依頼しました。格調高い空間のすべてを壊すのは忍びない、と既存もうまく活用しながら、工事費920万円(設計料込・施主支給分を除く)をかけて自分たちらしい住まいを手に入れました。
組み木のパーケットフローリングが美しいLDK
すべての画像を見る(全11枚)夫妻はアメリカに在住していた期間があり、そこで古いものを大事にする暮らしのよさを実感。経年変化を大事にし、楽しみながら暮らせる住まいづくりをスタートさせました。
約30畳のLDKは、ジル・サルファッティのシャンデリア、ジョージ・ネルソンのバブルランプが直線的な空間によく似合っています。
壁面収納は既存のものを活用。以前は床がカーペットでしたが、どうしてもフローリングにしたかったので、遮音対策を考えて管理組合に資料を提出。フローリングへの変更を承認してもらい、組み木のパーケットフローリングに。
ダイニングの歳月を経た造作家具ともよく馴染んでいます。
リビングの大開口部からは千鳥ヶ淵の桜も、東京タワーの夜景も楽しめます。ダイニングとキッチンの間は収納を兼ねたカウンターで仕切って、半独立型のキッチンに。
「使えるものは丁寧に使っていこう」と、既存のキッチンを利用しています。設備機器を一部更新し、面材をラワン合板で張り替えたことで、新旧部分が共存しつつも違和感なく調和。
IHコンロや食洗器はモデルルームで使われていたものを施主支給しました。
LDKとプライベートゾーンをしっかりゾーニング
玄関は土間を広げて、靴収納を造作。そして上部の壁を石貼りにして表情豊かに仕上げました。粗削りな石の存在感がヴィンテージの空間にマッチしています。また、以前の廊下部分を壁面収納に変え、玄関とLDKをフラットにつなげました。
玄関とつながるLDKの先にプライベートゾーンをまとめ、ゲートをくぐる感覚で行き来できるようにしました。
南向きで明るくホテルライクな個室
プライベートゾーンの奥にはふたつの個室が並んでいます。窓の外が緑に染まった寝室は、歴史あるリゾートホテルのように心地よい空間。ベッド脇のヴィンテージ感ある造り付けデスクは既存のもの。
一方の壁に凹凸のあるリブ材を張り、反対側の壁は珪藻土塗料、床はタイルカーペットと、独特の感性で素材をチョイスしました。
既存のウォークインクローゼットは扉を塗り替え、内部を調湿性のある珪藻土塗料で仕上げています。
寝室の隣に位置する、明るく眺めのいい子ども室。カラフルなカーテンや木製の棚が、子ども室らしい雰囲気をつくっています。
ベッド側の壁はラフな質感のラーチ合板張りに。床のカーペットは貼り替えが簡単にできるので、子ども室にピッタリです。
壁のくぼみに造り付けられた既存のデスクをそのまま生かして使っています。
水まわりは既存をうまく活用
水まわりの位置は変えず、バスタブやトイレなどの設備を新調。人造大理石の洗面台は既存のものを利用し、下部の収納だけつくり変えています。洗面室とトイレの照明も既存のまま活用しました。トイレの壁の一部は濃いブルーで塗装してアクセントに。
ヴィンテージな空間のなかで新旧がしっくり馴染むこの家で、西川さん一家は経年変化を大事にしながら暮らしています。
撮影 遠藤 宏
設計 オフィス・エコー
※情報は「リライフプラスvol.15」取材時のものです