出産をきっかけに「自分たちの好きなようにできる」家を購入することにしたOさん夫妻。住まい探しの際、最重視したのは立地。中古マンション+リノベ専門のスマサガ不動産の仲介で、立地・環境・価格のバランスがとれた約57平米のマンションを購入しました。そしてスマサガ不動産のプロデュースにより、設計はデザインライフ設計室の青木律典さんに依頼。家の真ん中に箱があるという個性的かつ快適な空間での暮らしを実現させました。
回遊性のある空間で、家族の気配を感じる暮らし
すべての画像を見る(全13枚)壁一面の本棚、夫のワークスペース、大きなキッチン、たっぷりの収納など、夫妻のたくさんの要望を解決したのが、部屋の中央に設けたひとつの箱。箱型の個室を部屋の中央に置いたことで廊下がなくなり、その分、空間を有効に活用できるように。
玄関からLDKに入ると目の前はスーッと視線が抜けるキッチン。キッチン本体の背面はオープン収納になっています。食器集めが趣味の妻も納得の、大容量の食器棚兼パントリーとして大活躍しているそう。棚板は数センチ単位で高さを変えられる可変性も。
料理上手な妻は、長年の経験をふまえてキッチンの設備や作業スペースの広さまで細かくオーダー。キッチンで作業をしていても、後ろを通り抜けられる十分な幅もしっかり確保してあります。キッチンの真横に冷蔵庫、真後ろに食器棚、作業スペースの横がダイニングと、作業効率も抜群です。
箱沿いに進みキッチンを抜けると、障子越しにやわらかい光が届くリビングダイニングに出ます。保温性と吸湿性に優れた障子は、明るさを伝えつつ直射日光を適度に遮る特性があります。
光が拡散されて部屋全体が明るくなり、視覚的に広く見える効果も。
そして、リビングには無印良品のい草ユニット畳を敷き、冬でも日差しが入ってポカポカと暖かいスペースに。3人で寝転がっているうちに、一度も外に出なかった日もあるそう。
窓際には10センチほどの奥行きがある縁側的なスペースも。障子は写真奥のスペースにすべて引き込めるように設計しました。さらに、寒さが苦手な妻の希望で、障子の上には断熱用のシェードを設置しています。
ソファの背面にあるのが、この部屋の中央を陣取る箱。この箱を配置することで、行き止まりがなく、ぐるりと部屋を一周できる回遊動線が生まれました。おかげでデッドスペースとなる廊下がなくなり、すべての空間が有効に活用されています。
箱の正体は、寝室兼ロフト!
リビングからさらに箱沿いに進むと、妻のあこがれだった壁一面の本棚があるスペースが。本を入れれば入れるだけ断熱の効果も期待できるそう。最も冷気が入りやすい窓面には障子を設置し、ベンチの下にはガス式のパネルヒーターも取り付けました。そして右手の引き戸を開けると、箱の中がお目見えします。
箱の中身は唯一個室にしたかったという寝室。寝るだけのスペースなので天井高を低く抑え、上部にロフトを作りました。現在は物置にしていますが、将来はキッズスペースとして活用することも考えているとか。
さらに進むとぐるりと一周して玄関から入ってきた場所に戻ります。こちらは家に仕事を持ち帰った時に作業ができる夫待望のスペース。箱の側面に奥行きの浅い板を取り付けただけのシンプルなつくりですが、椅子とパソコンを置けば子どもと一緒に使えるファミリースペースに。
ファミリースペースの後ろに設けた大容量のクローゼットは、全面に洋服をかけるポールがついているうえ、その上部にも下部にも収納スペースを確保。見せたくないものはすべてこちらにしまってスッキリ整えています。
モルタル塗装の玄関から水まわりへ
玄関は床だけでなく壁にもモルタル塗装を施して、シンプルに仕上げました。給排水管の勾配を確保するために床が上がって段差ができたため、緩やかなスロープに。ゆったりと広さを取ったので、ベビーカーを置いても余裕だそう。靴を置く棚は置くものによって高さを変えることができます。
水まわりスペースは使い勝手が悪かったため、少々位置を変更しました。浴室の隣にあった洗濯機置き場は奥行きが深くドアを邪魔していたので、トイレ脇の給湯器があった場所に移動し、洗濯機横にはトイレを配置しました。
個室がほとんどなく建具が少ないO邸ですが、窓の障子はもちろん、寝室・トイレ・クローゼットと、ほとんどのドアは引き戸を採用。
省スペースにも一役買いつつ、開け放てば風を通せるというメリットも。
もともと洗濯機があった場所は洗面スペースとし、同じ奥行きの棚を設けました。突き当たりのバスルームは、構造壁の都合で大きさを変更できずコンパクトですが、使い勝手は良好だそう。ドアを折り戸にして省スペースを実現しています。
寝室兼ロフトの「箱」を中心にした回遊性のある暮らしをするなかで、「休日にリビングの畳で昼寝をしていると、幸せだな~って感じるんです」と妻。お互いの気配を常に感じられる空間での暮らしを楽しんでいるようです。
設計 デザインライフ設計室
撮影 飯貝拓司
※情報は「リライフプラスvol.19」取材時のものです