東京都・新宿区にお住まいのSさんは、所有するマンションに空きが出たのをきっかけに、1・2階の3室をリノベーションして家族(妻、長女)と母の2世帯で住むことに。リノベーションを依頼したのは施工例が気に入ったというフィールドガレージ。「無骨で男っぽいだけだなくぬくもり感もある、バランスの取れた空間」を、工事費1,000万円(税・設計料別)でつくり上げました。
バランスの決め手は、重厚感のあるブリックタイルの柱
すべての画像を見る(全14枚)フィールドガレージから提案されたのは、ブリックタイル貼りの柱や壁付けの本棚がある、このラフスケッチ。「見た瞬間に気に入り、空間のイメージが固まりました。今ではこの家の象徴的な風景になっています」とSさん。
Sさんはモードの最先端をいくアパレル会社の社員。部屋も洋服も自分を演出するという意味ではよく似ているそうで、店づくりの経験がリノベにも役立ったといいます。
まずLDKは広く取り、大好きなヴィンテージ雑貨が自在に飾れるスケールを確保。古着屋や展示会の装飾をイメージし、壁は家具や雑貨が映える白をメインとしました。ローテーブルは「GALLUP」(東京・目黒)のもの。壁を飾るブリックタイル貼りの柱は、インテリアの一部のようです。
レトロなポスターのモデルは、グラフィックデザイナーだったSさんの実父なのだそう。
壁を撤去した際に現れた鉄骨を生かし、グレーに塗装をしました。メタリックな家具や雑貨と共鳴して、空間に一体感を生み出しています。手前に飾っているクジラモチーフのオブジェは、外国のフィッシュマーケットのサインプレート。
出窓には車のパーツなどを入れるのに使われていたツールボックスを置き、名刺など小物の収納に活用しています。
室内のいたるところで、古いタイプライター、オールドルアーコレクション、ミリタリーフィギュアなど、Sさんが長年かけて集めたヴィンテージ雑貨が棚や壁を彩っています。
ダイニングテーブルのマガジンラックは、実は煙草の販売ツールで、アメリカの古いものなのだそう。
「調理中も家族との会話を楽しみたい」という妻の希望から、キッチンは対面式に。造作したキッチンカウンターは、通路の邪魔にならないよう奥行きを浅くしました。前面は、家具との馴染みを考えてグレーに塗装。床には幅広のナラ材を使っています。
既存を活用しながら ”らしさ” をプラス
玄関ホールは、隣接する個室の収納を取り払って拡張し、ゆとりある空間に。奥行きのある靴箱を新設しています。
階段の壁と天井は白いクロスに交換。ヴィンテージのポスターを飾るうってつけの舞台となりました。2階は子世帯の寝室となっています。
建具は既存を利用していますが、青銅色に塗装してイメージを一新しました。
サニタリーのインテリアにもとことんこだわって
手前から、ランドリー、洗面、キッチンと一直線に並んでおり、動線を短くしたことで家事効率がアップ。ミラーキャビネットの扉は、妻が「どうしても使いたかった」というインドネシアの古い窓枠を使っています。
広々としたトイレには棚を造作し、雑貨を飾るディスプレイスペースに。照明の青銅色に合わせ、窓枠も同色で塗装しています。
リノベーションを振り返り、「ヴィンテージのよさって、〇〇風など ”なんちゃって” にはない、時を経た味のようなもの。家も同じで、垂れたペンキで床が汚れてしまったり、オイルを塗って風合いを出すなど、すべてをつくり上げてしまうのではなく、長く住みながら手を加えることで味が出る。そうするうちに、全体がしっくりなじんでいくんじゃないのかな、と。リノベーションの楽しさは、そんなところにもあるように思います」と、Sさんは話してくれました。
設計・施工 フィールドガレージ
撮影 山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.18」取材時のものです