東京都・中野区にお住まいのМさん夫妻の長女には障害があり、常に介助が必要。Mさん夫妻は、娘と自分たちが少しでも快適に暮らせるよう、住まいのリノベーションを決意しました。手を差しのべやすく、美しく。みんながずっと笑顔になれるユニバーサルデザインの家が実現しました。

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キッチン脇から長く延びるカウンターは、寸法や強度、素材の感触、足の入れやすさなど熟考してつくられました。床は浮造りのフローリングで、微妙な凹凸が足裏に心地よい刺激を

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リノベーションのきっかけは、水回りの変更だった家族全員が活用できる「カウンター」がこの家の主役!

リノベーションのきっかけは、水回りの変更だった

Mさん夫妻は、肢体が不自由な長女との3人暮らし。
「長女が4歳のときに入居しましたが、成長とともに入浴介助が困難に。水回りの変更がリノベーションのきっかけでした」(妻)

介助用具装着のために浴室を広げ、洗面・トイレと一体化できたら……。“スリーインワン”を手がかりに模索し、出会ったのが、駒田建築設計事務所の駒田剛司さん、駒田由香さんの施工例だったといいます。

夫妻が共有で使う書斎も実現。金具が一切見えない棚や納まりが美しい壁のコーナー部にも注目!

「介助のしやすさばかり考えていましたが、こんなにおしゃれにできるのかと! 同じ変えるのなら、私たちも楽しみたい。思いきって駒田さんに相談し、引き受けていただきました」(妻)。

家族全員が活用できる「カウンター」がこの家の主役!

「障害のあるなしにかかわらず、家づくりでやりたいことはみんな違います。先入観なくゼロから話を伺いました」と駒田由香さん。以前の間取りはは2LDK+納戸。壁で長女の姿が見えなくなりがちだったため、広々した空間への変更も望んだそうです。
また、いずれ長女が伝い歩きできるように、トレーニング用の長いカウンターをリクエスト。

カウンターは2か所開閉できるようになっていて、操作も驚くほど簡単。おかげで移動もスムーズ

駒田さんはこう話します。
「最初カウンターを周囲の壁沿いに設けてみたのですが、それだとお嬢さんは壁しか見えず、ご両親は彼女の背中しか見えない。顔と顔が向き合って楽しいほうがいいと考え直し、空間の中央を横切るように配置しました」。カウンターで長女はつかまり立ちに励み、キーボードで遊ぶ。

「介助がずっと必要だとしても、立ち姿勢で視野がぐんと広がり、娘の興味の幅が増えているように感じます」(妻)。さらにこのカウンターで奥さまは家事をこなし、ご主人は新聞を広げます。夜はバーカウンター代わりにも!強度を備えつつモダンな形状も目を引く、まさにM邸の主役的な存在です。
「介助がともなうと、何かと仕方ないよね…となりがちですが、デザインも諦めなくてよかった。素敵な空間の中で暮らせ、毎日ハッピーです」と笑顔で語る夫妻だ。

設計/駒田建築設計事務所
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.26」取材時のものです