年末年始に向け慌ただしい時季。普段よりも忙しいこともあり、つい夫や子どもに怒ってしまう方もいるのでは?

「本当は怒りたくないのに、つい家族に口うるさく言ってしまう、ということはだれにでも起きることです。怒りをうまくコントロールする方法を知っておけると心にゆとりが生まれますよ」と話すのは、精神疾患の方のケアのほか、家族や人間関係、心の不調など多くの相談を受けている、精神保健福祉士でライターの東亜衣子さん。その具体的な方法を教えてもらいました。

怒りたくないのに、カッとなるとき、どうすれば?(※写真はイメージです。以下同)
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怒りに潜んでいる感情に注目して。カッとなったらまず深呼吸も

他人にはがまんできることも、家族だとつい怒ってしまいせっかくの休日も暗い雰囲気に…なんて経験がある方も多いのでは。とくに年末年始などせっかくのお休みは、コロナ禍で思うように外出できない今、できることならニコニコ穏やかに過ごしたいですよね。そこで、すぐに実践できる怒りの感情をコントロールする方法をお伝えしたいと思います。

●一度深呼吸をして、呼吸を落ち着かせて

掃除をする女性

まず、カッと頭に血がのぼったら、一度深呼吸してください。

怒っているときは、呼吸が浅く早くなっていますので、深く呼吸をすることが大切です。浅く早い呼吸のままでは、興奮が収まらずに怒りは持続してしまい、そのことで怒っている時間も長くなってしまいますし、そこから新たな怒りが生まれてしまうこともあります。

時間を置くと、なんで私はあんなに怒っていたのだろうと考えた経験がどんな人にもあると思います。怒りは時間とともに薄まりやすい感情です、その特徴を生かし、まずは一呼吸おいてみる。意外とそこでスッと収まる場合もあります。収まらない場合は次のステップへ。

●なぜ私は怒っているのかを考える

考えている女性

怒りの気持ちが湧いたときに考えてほしい2つのことがあります。

「なぜ怒っているのか」 「なにに怒っているのか」

「すぐに家族に怒ってしまうからどうにかしたい」と相談があったときに、こうアドバイスすると、多くの方から怒っているときに冷静に考えるのは難しいと言われます。
でも、一呼吸おいたついでに、少し踏ん張って考えてみてください。

じつは「怒り」の感情、第二感情と呼ばれ単独では発生せず、前に潜んでいる感情、つまり第一感情があるのです。

<例1:夫に連絡がつながらず、しれっと帰宅>

例えば夫に用事があって電話しているのに電話がつながらない。何度かけてもつながらない。それなのに夜遅くしれっと帰ってきた夫につい強く「なにしてたのよ! 今何時だと思っているのよ!」と怒ってしまった。

この怒りの前に潜んでいる第一感情は

「心配」

です。
「夫が電話に出られない状況(事故など)なのかと心配していた」という気持ちのあとにじわじわと怒りが湧いてきたのです。

<例2:夫が子育てに非協力的、やってほしいことをやってくれない>

そして夫婦間で圧倒的な確率で怒りを生み出す原因になるのが、子どもの存在です。子どもを挟んでの夫への怒りは、第一感情なんてないでしょうと思われるかもしれませんが、ここにも必ず存在します。

それは

「不満」

です。例えば、早く子どもをお風呂にいれてほしいのに、一緒になって遊んでいる夫にイライラ…など。夫の子育てに対するやり方(子どもへの接し方や優先順位のつけ方)に、自分の思い通りにならない不満があるのです。

いちばんよくないパターンは、夫への怒りだったものが子どもに向かってしまうことです。自分でも夫への怒りなのか、子どもへの怒りなのか判断できていない場合も多くあります。

怒りには必ず潜んでいる第一感情があり、この潜んでいる感情に気づくことが怒りをコントロールする大きな一歩。例に挙げたどちらの夫婦関係でも、ここで怒りの感情に任せて怒ってしまうと、妻と夫の関係は悪くなる一方です。

夫からすると、電話に気づかなかっただけなのに、ドアを開けるなり怒られ…。子どもと楽しく遊んでいるだけなのに、妻は機嫌が悪く、怒ったように早くお風呂に入れと言われる…。これでは怒ってばかりの妻と思われても仕方ありません。

●怒りの力を借る前に、言いたいことを伝える

話し合う男女

自分の「怒り」に潜んでいる感情に気づいたら、そのことを冷静に言葉にして伝えるようにしてみましょう。

<潜んでいる感情が「心配」だった場合>

「電話がつながらなくて、事故にあったのかと心配した」と夫に伝える。
こう言われた夫は「心配かけてごめんね」と謝ってくれるでしょう。

<潜んでいる感情が「子どもへの接し方に不満がある」だった場合>

「昨日も寝るのが遅かったから、今日は興奮させずに早く寝させたい」と夫に伝える。子どもに八つ当たりしてしまう前にきちんと夫に伝えましょう。
こう言われた夫は「わかった」と答えるでしょう。

怒ってしまうと、相手も反発してけんかになったり、次に同じことがあった場合にまた険悪な事態を繰り返したり悪循環になりやすいですが、落ち着いてきちんと気持ちを伝えれば意外とすんなりと伝わります。

●それでも怒りが止められないときは…

ベランダでたたずむ女性

怒りの原因がわからない、怒りの感情が止められない、というときもあると思います。そんなときはとにかく相手と物理的な距離をとり、怒りをぶつけられない状況に一度避難してみてください。家から出られないときには、個室(トイレやお風呂でもOK)に入るのもいい方法です。まずは怒りの相手の顔を見なければ、怒りをぶつけられなくなります。

夫に怒る妻というケースを例に出しましたが、これらの方法は、相手が子どもの場合も有効です。子どもについつい怒鳴ってしまうという場合にも試してみてください。

●自分と家族は違う人間。伝わらないことがあって当然の存在

家族に怒ってばかりといわれる人は、じつはものすごく家族のことを気にかけて、家族のために尽くしている人だということが多いのも事実です。家族に興味がない人は、家族に怒ることもありません。

でも、夫や子どもも家族は自分とは違う人間です。思っていることが伝わらないことも、あって当然の存在なのです。また、怒ることはかなりのパワーが必要に。自分も怒られた方もパワーを消耗し疲弊してしまい、回復にも時間がかかります。

怒って一日過ごすよりは、笑って過ごしたい。同じ一日を過ごすなら笑える方がいい。だれもがそう思っているはず。怒りの感情に飲み込まれず自分で怒りをコントロールできるよう、一度立ち止まって深呼吸、参考にしてみてくださいね。