有名人の自殺という衝撃的なニュースが続いています。これらのニュースは、見ている人にも大きな影響を与えます。
うつ専門メンタルコーチで、数多くの悩みに寄り添ってきた川本義巳さんに、「もしも自殺を意識してしまったら、どうすればいいか」について聞きました。
もし自分が自殺を意識してしまったら、どうしたらいいのか
ここ数か月の間に、有名人が立て続けに自ら命を絶つという信じられないことがありました。
有名人が自殺をする。そのニュースはファンのみならず、多くの人に影響を与えます。
今回のことを受けて、何人かの方から「もし自分が自殺を意識してしまったらどうしたらいいですか?」「知人から『死にたい』と言われたらどう答えればいいですか?」といった質問を受けました。
8月に自殺者が急増したというニュースもありましたから、こういった場面について、私たちも想定しておく必要があると思いましたので、今回は自殺を意識してしまった人に私がどういうことを伝えているかをご紹介いたします。
ちなみに私の場合、仕事柄、「傾聴」を最初にしています(これがとくに重要です)。しっかりと話を聞いてから、以下のことを伝えていると考えてください。
(1) そう考えてしまうのは、当たり前のこと
私たちは自分の死を意識したときに、やはり恐怖や不安といった感情が生まれます。
でもこれは人間として当たり前の反応でもあります。私は相談者が「死にたい」と思ったり、そう考える自分が怖くなったと話してくれたときに、まず「それは自然なことだ」と伝えます。
相談者は自分だけが孤立したような感覚になっています。それに対して「そうではないよ。みんな一緒だよ」というメッセージを伝えることで、落ち着いてもらいます。
(2) 「それはその人の人生であってあなたの人生ではない」こと
だれかの死に影響を受けてしまった場合、その人は亡くなった方の人生と自分の人生が混同しているような感覚になっていります。そのため、二人の境界線を明確にします。
だれもが他人の人生を生きることはできませんし、他人の意思に随伴する必要もありません。自分は自分の人生を生きる、これが私たちがやるべきことです。
(3) つながりをもつことの大切さ
とにかく一人にならないことが大切です。家族、パートナー、友人、だれかとつながっている感覚をもち続けてください。そして、つらくなったら話をする相手をできたら見つけておいてください。
人は「相談したら迷惑がかかる」と考えてしまいがちですが、反対の立場に立ったら「相談してくれたらよかったのに」と思うものです。「困ったときはお互い様」という言葉がありますが、だれかを頼るというのも大事です。
(4) 専門家を頼ること
心の問題はいうまでもなく、体の健康のことや経済的なこと、あるいは法律知識が必要なこと、福祉や行政サービスを使う必要があることが背景にあれば、その専門家を頼ることも伝えています。実際に「どこに相談すればいいのか知らない」という人もいらっしゃるので、一緒に調べるというのも大切です。
以上のように、私が相談を受けた場合はこの4つのことを中心にお話するようにしています。これらのことは、「自分を客観視する機会」にもなりますので、できれば普段から意識をしておいてもらえると、いざというときの影響が少なくてすむかと思います。
最後に、私にも経験がありますが、だれかが命を絶つと、残された者は、いろんな感情と向き合い続けることになります。
私は自分が「死にたい」と思ったときは、真っ先にそのことを考えるようにしようと思っています。
そして、残された者は、その人が生ききれなかった分も自分の人生を大切に生きる役目があると思います。それがその人の死を無駄にしない方法ではないでしょうか。
【参考】
こころの健康相談統一ダイヤル
0570-064-556