妊娠の早い時期にお腹のなかで赤ちゃんが亡くなってしまう「流産」。じつはすべての妊娠の15%程を占める、珍しいとはいえないケースです。
今回は流産にはどのような種類があるのか、原因や対処法にはどのようなものがあるのか、不妊治療の専門家である杉山力一先生に伺いました。

膝を抱える女性
初期の流産は染色体疾患や遺伝子病が原因として考えられます
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流産は、じつは原因がわからないことが大半です

流産とは、妊娠22週未満で妊娠が終わってしまうことを指します。原因によって分けると次の2種類に分けられます。

人工流産:人工的な中絶手術による流産。 ・自然流産

:上記以外の、自然に起きる流産のことすべて。
そこからさらに、自然流産は経過によって分けられます。

切迫流産:少量の出血があり、流産発生の恐れがあるが、妊娠継続が可能な状態。 ・進行流産:腹痛と共に赤ちゃんが出てきてしまう、流産が進行している状態。 ・稽留流産

:赤ちゃんは子宮の中にいるが、心拍が確認できない状態。母体に自覚症状なし。

また、流産の進行具合によっては以下のように分けられます。

完全流産:赤ちゃんを含む子宮内容がすべて排出された場合。 ・不全流産

:子宮内容の一部が体内に残っている場合。出血や腹痛が続いており、子宮内容除去手術を行うことが多い。

これらすべてを合わせて、流産が起こる確率は、全妊娠のうち約10~15%と言われています。また、流産の起こる確率は年齢と共に高くなっているという報告もでています。

●初期の流産は染色体疾患や遺伝子病などが引き金に

流産はその9割程度が妊娠12週までに起こるため(早期流産)、妊娠初期の妊婦さんは非常に心配されることが多いです。
しかし、流産の原因を特定するのは容易ではなく、原因が特定できない症例が、全体の50%程度とされています。

一般的に初期の流産は染色体疾患や遺伝子病などなんらかの疾患によって起こることが多く、これらは胎児側に原因があるとされています。

一方で、妊娠12週以降で流産が起こる場合には(後期流産)、母体側に原因があるケースが増えます。子宮発育不全や子宮奇形、子宮筋腫、子宮内の癒着、頸管無力症などの性器の異常や、高血圧、糖尿病といった内分泌疾患などが考えられ、これらの病気の対策をしないと、流産を繰り返す可能性があります。

●流産を防ぐ方法は?

先ほどご紹介したように、早期流産の多くは胎児側に原因があるケースで、その場合にはなにをしても流産を防ぐこと、進行を止めることはできません。

初期流産を経験された場合にはご自身を責めずに、「今回の流産は避けられないものだった」ということをご自身も周囲の人も理解することが大切です。

●流産になったあとにすること

流産となってしまった場合、子宮から赤ちゃんを取り出す必要があります。ここでは自然流産の進行具合別に、流産が発覚したあと行う対応についてみていきましょう。

・切迫流産の場合

切迫流産の場合は、「流産」という単語がついていますが、「流産のリスクが通常より高い状態」という意味で、まだ妊娠が継続している状態です。
実際に切迫流産全体では、90~95%程度が正常の妊娠に戻るとされていますが、切迫流産と診断された場合には医師の指示に従われることをおすすめします。

・進行流産の場合

腹痛と共に赤ちゃんが出てきてしまう進行流産の場合、ほとんどの方が病院外で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)を排出しています。
しかし、まれに胎嚢が完全に排出しきらずに出血が持続してしまうことがあります。通常の月経時と比べて明らかに多い出血があるにも関わらず胎嚢の排出がないときには、病院に連絡されることをおすすめします。

・稽留流産の場合

赤ちゃんは子宮の中にいるものの、心拍が確認できない稽留流産の場合には、胎嚢が自然に排出するのを待つ方法(待機的管理)か、器具を用いて胎嚢を排出する方法(手術療法)のいずれかが選択されます。
どちらを選択されるかは、ご自身の希望を医師に伝え、相談しながら選択されることをおすすめします。

●一度流産となった影響で、必ずしも子どもが授かりにくくなるということはありません

流産と診断された場合にご自身を責めないでください。できる限り冷静に医師から説明を受け、ご自身とパートナーの気持ちを確認し、その後の対処法について相談していかれることをおすすめします。