雑誌『天然生活』『クウネル』などで人気のエッセイスト・広瀬裕子さん(60歳)。ここでは、60歳を迎えるまでの日々で考え、選択し、アップロードしている暮らしの知恵や思いを書き下ろしたエッセイ集『60歳からあたらしい私』より、クローゼットの見直しについて抜粋して紹介します。

広瀬さんが髪を結っている
広瀬裕子さん(59歳)が、クローゼットの整理で意識したこととは?
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今まで似合っていた服に“違和感”を覚えるとき

ある日、今まで着ていた服に違和感を覚えることは、歳を重ねると多くの人が経験することです。

ほかの人からはわからない自分だけの違和感。素材なのか、形なのか、色なのか。もしくはそのすべてなのか。そういったことがあり、何度かクローゼットを見直す機会が訪れます。わたしは40代と50代はじめに「そのとき」がきました。そう考えると、60代にも同じことが起こるかもしれません。

年齢より若く見られたいわけではないのです。ただ、自分の好きなスタイルで、気持ちよく、機嫌よくいられる服を着たいだけなのです。少しだけその時代の空気を纏(まと)い、そのうえで無理をすることなく、年齢に抗うことなく。

若いときは、多少暑くても寒くても大丈夫だったことも、身体の変化と体力の低下で年々、大丈夫ではなくなってきます。暑い季節は涼しくいたいですし(近年の猛暑は生命に関わります)、寒い時期は暖かく(冷えると体調を崩します)過ごしたい。そう思うようになりました。

「違和感時期」を迎え、気に入っていた服が似合わなくなることを経験した結果、これからはたくさんの服がなくてもいいと考えるようになりました。その年齢の自分に似合うもの、好きなもの、快適なもの。それらが数枚あればいい、と。

管理できる少ない数で、長く着られるものを選ぶ

クローゼットの写真

結局、数多く服をもっていても、そのときに気に入った服ばかり着ていることが多いのです。「今日、なにを着たらいいかわからない」となることもあります。それに「違和感」を覚えると、最終的には手放すことになり、そのときなんとも言えない気持ちになります。

たどり着いた答えは、服は管理できる少ない数で、手入れしやすく、アイロンがけの回数が少ない、できるだけ長く着られるもの、になりました。

日々のなかでは「優先順位」というものが存在します。服に関しても同じ。そこで、自分なりに服の優先順位を決めることにしました。私の場合は、1:色、2:形、3:素材です。

色は、黒、グレー、白。基本は無地。形は、試着をして「気になるところがないもの」です。「気になるところがない」というのは、体形がきれいに見える、つまりカバーしてくれるものです。そういう服は、試着した際、迷いません。

ハンガーにかかっているときはすてきでも、実際に着て少しでも気になるところがあれば、見送るようにします。この「見送ることができるようになる」というのは大きいです。試着室で「どうしよう」がなくなりました。なにかを気にしながら服を着るのはストレスです。