「振り向いてくれないそのツンデレさにメロメロです」、「感情のままにシャーと威嚇する姿に憧れます」。Instagram上にそんなコメントがあふれるのが、保護猫カフェ「Catloaf」で人気の“シャーシャー猫”チャイさんです。人間が近づくたびに「シャー!」と威嚇するその姿が「かわいい」と評判になり、現在多くの猫好きを虜にしています。チャイさんの日常を紹介しているのは、「Catloaf」のオーナーである増田拓也さんです。今回は増田さんに、チャイさんとの出会いや保護猫活動を始めた理由についてお話を伺いました。
すべての画像を見る(全4枚)子猫とともに保護されてやってきたチャイさん
2023年の夏、四国の高松で自分の子猫たちと共に保護された野良猫のチャイさん。現在は、増田さんが経営する「catloaf」で、平和な日々を過ごし、2月にはチャイさんの日常をつづった『保護猫チャイさんの日常』(扶桑社刊)が発売されました。
しかし、チャイさんはほかの保護猫たちに比べても警戒心が強く、人になれるのにかなり時間がかかったのだとか。
「野良猫は警戒心がなければ、人間やほかの動物に脅かされてしまうので、チャイさんのような“シャーシャー猫”は珍しくありません。でも、保護猫になったので、チャイさんには人になれてもらいたい。そうすればカフェにも出られるし、将来的に里親のもとに送ることもできるようになります」(増田さん、以下同)
そこから始まったのが、チャイさんを人になれさせる特訓でした。ぬいぐるみを近づけてみたり、タオルを持った手を近づけてみたり、優しく話しかけてみたり。それでも、チャイさんの“シャー!”という威嚇は相変わらず。猫の大好物であるチュールを近づけても、チャイさんは微動だにしません。
しかし、特訓を続けるなか、次第に少しずつ甘える様子も見せるように。そんなチャイさんの姿を見た増田さんは、「多くの人にそのがんばりや変化を見てほしい」と、SNS上にチャイさんの動画をアップ。投稿した動画は、いまではYouTubeとInstagramで1億回以上の再生回数を達成し、一躍、チャイさんは、日本だけでなく世界でも大人気の“シャーシャー猫”になったのです。
以前は「猫を引き取ってほしい」という問い合わせも
増田さんが保護猫カフェを始めたのは、2020年のこと。とはいえ、小さい頃から「自分は猫好き」と意識したことはなかったのだとか。
「猫カフェを始めたのは、前職で人間関係に疲れてしまったからです。当時は飲食業界に勤めていたのですが、辞めるとき上司から『猫カフェとかやってみたらどう?』と言われて。実家でもずっと猫を飼っていたので、幼少期から猫は身近にいるのが当たり前すぎて、猫好きだと自覚したことはなかったんです。ただ、その上司の言葉をきっかけに、猫に関わる仕事がしたいと思うようになり、猫の保護活動と保護猫カフェを始めようと決めました」
さらに、野良猫を捕獲して不妊治療後にもとの場所に戻すTNR(Trap-Neuter-Return)活動も実施。カフェもTNR活動もゼロからのスタートでしたが、いざ始めてみると保護依頼の多さに驚いたといいます。
「僕が住んでいる高松周辺は温暖で災害も少ないので、もともと野良猫が多いんですね。今は、新規での猫の引き取りはやっていないのですが、店をオープンしたての頃は、とくに春から秋にかけて『猫を引き取ってもらえないか』『あそこの猫を保護してほしい』という連絡が毎日2~3件はありました。
野良猫が増えすぎれば、人間にとっても猫にとっても不幸な結果になってしまう。すべての野良猫を保護することはできませんが、人になれすぎて危ない野良猫などは、可能な範囲で気にかけて、余裕ができ次第、受け入れるようにしています」
「なぜ人になれている猫が危ないの?」と思われるかもしれませんが、逆に人になれすぎている野良猫は警戒心が弱いため、虐待などの被害に遭う危険性があるのだそうです。
「自分にできることをできる範囲で」と地道に活動する増田さんは、「将来は傷ついた猫や引き取り手のない猫のシェルターをつくりたい」と語ります。