夫のことは「仏様みたいにいい人」と話していた

高峰さんと夫
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――サブタイトルにある、「救った男」の松山善三さんとは、斎藤さんから見て、どんな方だったんでしょう?

斎藤:高峰と親しくなって家に出入りさせてもらうようになった頃、まだ私は松山に懐いておらず、正直、苦手でした。気難しそうだったし(笑)。

――なんと、それは意外です。

斎藤:でもその頃、高峰はふた言目には私に「とうちゃんはいい人よ。仏様みたいにいい人」と言うので、私は思わず「もう何度も聞いたよ」と口答えしたくらいでした。しかし2010年に高峰が他界して、その後松山が亡くなるまで6年間、私は松山と2人で暮らして、ハワイにも2人で年に2~3回は行きました。その時間のなかで、私はなぜ高峰があれほど松山を愛したのか、そして耳にタコができるほど高峰に言われた「仏様みたいにいい人」の意味が、身に染みてわかったんです。

――そうだったんですね。松山さん、すてきです。そして高峰さんはそんな松山さんだからこそ、どんな格差があっても結婚を決めて、生涯心底愛していたのですね。

斎藤:松山は決して人を傷つけるようなことを言わず、いやみや皮肉などとは無縁の、もちろん声を荒げるなど一度もなく、本当に気持ちが清潔で温かい人でした。通ってくれるヘルパーさんや、ときどき短期入院した際に看護婦さんがなにかしてくれると、必ず「ありがとう」と言って、ヘルパーさんや看護婦さんは驚いていました。

――当時の日本の男性には少ないタイプだったのではないでしょうか。松山さんはソフトで、紳士的な方だったのですね。本当にすてきです。

斎藤:本当にそばにいるだけで心が安らぐ人でした。高峰が結婚を決めたとき、「こんな人とは二度と逢えない」と思ったことに心から納得しました。

――すてきなお話をありがとうございます。

ふたり ~救われた女と救った男』を読んでいただけたら、この奇跡のような夫婦の理解が、より深まりそうですね。

貴重なプライベートアルバムと高峰秀子さんの随筆、言葉、斎藤さんが長年収集した貴重な資料や斎藤さんしか知らない情報を解説に付して、ひと組の男女の数奇な運命を描いた『ふたり ~救われた女と救った男』(扶桑社刊)。懸命に生きていればきっと未来は開ける、読めばだれもが励まされる一冊です。

ふたり ~救われた女と救った男

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