女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さん(58歳)が、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地でありその後も定期的に訪れるスウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は「北欧・スウェーデンの冬の楽しみ方」について。暗い季節を心地よく過ごす工夫やクリスマスについて紹介します。

猫とフィーカ
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フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと

86歳母と一緒に語る「スウェーデンのクリスマス」

川上麻衣子さん
川上麻衣子さん近影

秋を満喫することなく、突然に冬がやってきたような寒さに戸惑う2024年年末。この季節になると数年まえからの北欧ブームもあってか、86歳になる母とのトークイベントが増えてきました。

母と語る川上麻衣子さん
86歳の母と登壇した北欧にまつわるトークショーの1コマ

場所は百貨店の催事であったり、北欧関連のスペースであったりとさまざまですが、皆さんの興味は北欧のクリスマスの過ごし方にあることがよくわかります。講演やトークイベントに呼ばれることも年々増えている気がします。

そんななか、私ごとにはなりますが、数々のイベントを淡々とこなしていく元気な母の姿には圧倒されています。

仕事を持つことが、人生にどれほどの「艶」を与えてくれるものなのかということを目の当たりにしながら、同時にスウェーデンでは人口の80%の女性が働いている(参照:2019年OECD Data)ことも思い出しています。

昨年末、60年近く暮らした実家を処分した際に発掘された大量のヴィンテージ物が、母の中に眠っていた1950年代の輝かしく刺激的な日々を呼び起こしているのかもしれません。

私は幼い頃にインテリアデザイナーである父母とともにスウェーデンで暮らしていたことがあるのですが、母がイベントで語る「スウェーデンの暮らし」の話を聞きながら、彼女のデザインの根源は北欧・スウェーデンの地にあることを、今更ではありますが実感するのです。

スウェーデンの冬は太陽よりも「月明かり」の時間が多い!

そんなスウェーデンをはじめとする北欧の冬。皆さんの中にはどんなイメージがあるでしょうか。アナと雪の女王に象徴されたような寒く冷たい氷の世界でしょうか。

幼少期の川上麻衣子さんと両親
9歳頃、両親と暮らしたスウェーデンの自宅

私がスウェーデンの冬をいちばん長く過ごしたのは9歳の頃。日本の学校を休学し、スウェーデンの学校に編入し暮らした1975年のことです。

夏至の頃、太陽が沈まない「白夜」があることはよく知られていますが、その反対に冬には、1日のほとんどを月と過ごす「極夜」があることはあまり知られていないようです。

北欧の夏は短く、8月には秋となり、日に日に寒さを感じると同時に、日の暮れる時間が早くなることを実感します。11月がいちばん憂うつな季節とされるのは、寒さよりも訪れる暗さにあるのではないでしょうか。

11月のストックホルムの港
21年11月頃に訪れた際のストックホルムの港。早朝の空の色が幻想的

冬至が訪れるクリスマスの時期までが、最もつらい季節とされています。私自身も月を見ながら登校し、月を見ながら下校した不思議な体験を景色とともに今でもしっかりと覚えています。

スウェーデンの首都ストックホルムでは、午前10時過ぎに太陽が昇り始め14時には暮れ始めます。子どもながらに太陽が昇りきらずに沈んでしまう重圧のような感覚は、たしかに気分を落ち込ませるものでありました。