フランスの「実家の片づけ」について紹介します。フランス文化研究者・翻訳家でフランス人の夫をもつペレ信子さんは、今年の9月に夫の母が亡くしたことで、義父がひとり暮らしに。義父は自分の暮らしを整えるため片づけを始め、「ものを捨てないのがフランスの義父の世代の信念」ということで、捨てない片づけを継続中。どのようにすれば捨てない片づけができるのか、また、どうしても捨てなければならないものについてレポートしてくれました。

フランスの蚤の市
ものを大切にする人々が愛する蚤の市(※画像はすべて著者撮影のイメージ写真です)
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思い入れのあるものは生前に行き場所を決めてしまう

カップ&ソーサー

フランスの実家の片づけで、義父が最初に始めたのが義母の膨大な量の洋服でしたが、もらってくれる人が多く、あっという間になくなったことは以前書きました。

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義母は数年前から闘病していて、前から冷静に自分の状態を判断していたようで、家族や友人に「この家の中で欲しいものがあったら言ってね」と言っていました。

夫の祖母も同じように言っていたそうです。夫が学生だったとき、台所に立つ祖母から「この家の中で欲しいものはある?」と聞かれ、台所の入り口にかけられていた小さな絵が欲しいと答えたそうです。商業的な価値はまったくない、祖母の何世代か前の親戚が描いた絵でした。祖母はその場で絵の裏に夫の名前を記し「これはあなたのだからね」と言ったそう。その絵は今、わが家にあります。

生前、義母も自分が使っている身の回りのものを気に入った人がもらってくれるように希望を聞いて「あなたにあげるね」と約束していたそうです。お葬式後にすんなりと、それぞれの人のもとに形見が届けられたとのことでした。

古い靴を大量に発見!でも捨てずにリサイクルセンターに

デスク

義父のことが心配で電話の回数が増えました。そうすると日常的に片づけの進み具合がわかります。片づけが進むなか、義父が「たくさんあって驚いたもの」にあげたのが義母の「靴」でした。

亡くなる前は外出もあまりなく、病院に行くときに履く靴は決まっていました。義父が長く確認していなかった靴の収納棚をのぞいてみると、元気なときに履いていたちょっとヒールがある靴、サイズが合わなくなってしまった靴、直しに出しそびれてしまった靴など、数えてみればゆうに数十足あったそうです。

古くなってしまった靴はもらい手もないでしょうし、廃棄するのかと思ったのですが、義父は「ressorcerie(地域のリユース&リサイクルセンター)に持って行ったよ」と言います。リユース&リサイクルセンターというのはそれぞれの自治体にある、資源回収所。服や靴、素材として使える金属、革、布などを回収し、リユースできるものはきれいにしてそのまま販売、そのままでは使えないものは素材を再利用して新しいものをつくる活動をしていて、あるセンターの廃棄率は回収品の約10%しかないそう。徹底的にものを活かす精神が感じられます。