更年期はうつや不安症状に悩まされる人が多い世代。メンタル不調の原因や、その対策として十分な睡眠を確保する方法を解説します。参考にしたのは、医師・天野惠子さんの自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)です。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきた天野先生。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話します。

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更年期世代に多いメンタルの不調(※画像はイメージです)
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心の不調は女性外来でも対応可能になってきている

メンタルヘルス領域における約20年間の大きな進歩は、心に不調を抱える人が気軽に受診できる窓口が増え、軽症のうちに治療につながりやすい状況になったことです。「○○病院精神科」に行かずとも身近なメンタルクリニックで精神科医の診療を受けられますし、女性外来での漢方薬処方やホルモン補充療法で対応可能なケースも少なくありません。

天野先生の外来にも抑うつや不安症状を訴える患者さんが多く訪れるそうです。時間をかけて話を聞き、生活習慣のアドバイスを基本に症状に応じて漢方薬や軽い抗うつ剤の処方、和温療法(乾式サウナ器で全身を温める方法。血行改善とリラックス効果がある)などを行い、専門的治療が必要と判断した場合は精神科医を紹介することも。

受診時には、「どんな症状がいつ頃始まったか。今いちばん困っていることはなにか」をメモにまとめて持参すると診療がスムーズに進みます。

●ホルモン変動とストレスで女性はメンタルを崩しがち

女性はどの年代でも男性よりうつになりやすく、その背景に2つの要因が関係しています。1つはホルモンの変動という身体的ストレス。もう1つは女性としての立場や役割などから生じる心理社会的ストレス。後者は時代とともに複雑になり、メンタルへの影響が深刻なケースも増えています。

なかでも更年期は、エストロゲンの低下による自律神経の乱れに家族関係や仕事、介護などの負担が重なり、うつや不安になりすい年代です。まずこのことを自覚しておきましょう。

安眠は心身の健康の基本。自分の生活リズムを優先

良質な睡眠のイメージ画像
※画像はイメージです

十分な睡眠は自律神経を安定させ心身の不調を和らげる効果があります。少なくとも6時間の睡眠を確保しましょう。深部体温が約1度下がると体は入眠モードになります。就寝前のリラックスと上手な体温調整が重要です。

また、ありがちなのは家族の生活リズムに合わせることで生じる二次的な睡眠障害。40代~60代女性の睡眠時間は男性より約1時間少ないとのデータがあります。家族間で睡眠の大切さを共有し、帰るまで起きて待つ習慣の見直しを。

十分な睡眠をとるために、下記の対策も参考にしてみてください。

●安眠対策1:寝る前にリラックスする

・ホットミルク、ハーブティーなどをゆっくり飲む
・アルコールは睡眠を浅くするので就寝の2時間前まで
・カフェインを含む飲み物は18時以降控える
・好みの香りのアロマで気分を落ち着ける
・軽いヨガやストレッチで体をほぐす

●安眠対策2:深部体温を下げる

・入浴は就寝の1~2時間前に済ませ、体に熱をためない
・アイス枕で頭を冷やす

●安眠対策3:自分のリズムを優先する

・家族の深夜帰宅や早朝出勤に無理に合わせない