ささやかな発見を、大いに喜んで、面白がる
夫を失くしたとき、もちろん十分に悲しかったのですが、それでも当時はまだ50代と若く、きっとパワーがあったのでしょう。
いつしか、「家族と一緒に暮らしたこれまでの時間よりも、これからひとりで過ごす時間の方が長くなるのかもしれない。それならば、これからの自分がどうやったら元気で、楽しく暮らしていけるかを考えよう」と、これから先に訪れるであろう「老い」に対して、非常に前向きな気持ちで向かう決意ができた気がします。
「これからは2人で支え合って生きていこう」なんて思う暇もなく逝ってしまったので、幸か不幸か、長い2人暮らしを経たからこそ感じる強烈な寂しさはおそらくわたしには訪れず、それよりも「これから自分の気持ちをどう自分で盛り上げて暮らしていこうか」という意識の方が、勝っていたのですね。
70代に入ってその意識はどうしても弱くはなっているのですが、それでもいつも「どこに喜びを見いだせるかな」と考えています。すると、毎日の暮らしのなかでも、お楽しみや驚きを見つけることができます。きっとなんとなく暮らしていたら見逃してしまうであろう、ささやかなこと。それを見つけて、どう楽しめるか、面白がれるかで、日々の暮らしはだいぶ変わってくる気がします。
すべての画像を見る(全3枚)先日、お友達の話から、自分で持参すれば粗大ゴミを安価に処分してくれる公共施設が、地元にもあることを知りました。たまっていた不用品をせっせと車に積んで運んでいくと、わずか数百円で引き取っていただけたことにびっくり。
片づいた部屋を見れば、すっきり整って気持ちがいいし、自分が行きたいときに自分で持っていけばいいというシステムも、私の性に合っている。その心地よさにすっかりハマったわたしは、家で不用品はもうないものかと、室内をうろうろしながら粗大ゴミを探し回ったぐらいです。
まつ毛美容液も粗大ゴミの処理施設も、今の私の暮らしのなかで、とっても楽しいことのひとつになりました。
足立洋子さんの暮らしの工夫やひとり暮らしに役立つレシピ、53歳で夫を亡くし、立ち直るまでの心の動きを綴った『さあ、なに食べよう? 70代の台所』(扶桑社刊)は発売中です。