53歳で夫が急逝し、およそ20年間ひとり暮らしを続ける料理家の足立洋子さん(72歳)。気力や体力ががくっと衰えたという「70代の壁」に直面しながらも、日々を明るく前向きに過ごしています。そんな足立さんが、自分がご機嫌になるための毎日の工夫を1冊にまとめた書籍『さあ、なに食べよう? 70代の台所』(扶桑社刊)より、ひとりで生きていくことを覚悟し、寂しさを克服していくきっかけとなった出来事について紹介します。

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72歳・ひとり暮らし。夫が急逝し、なにもできなくなってしまった日々を経て考えた「自分の役割」

「あ、ひとりで生きていけるかも」と思った瞬間

足立洋子さん
およそ20年間ひとり暮らしを続ける料理家、足立洋子さん(72歳)
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夫がいたときは、「もし、ひとりになったらどうやって生きていこう」と頭に浮かんでは、不安を抱いていたこともありました。

嵐の夜なんか、窓がガタガタと音を立てるだけで、「怖くてこんなところに寝ていられないわ」とまったく寝つけない。私にもかわいい頃がありました(ご安心を、今やそんな夜でもぐうぐう寝ています)。

夫とは歳が離れていましたから、娘と息子に言わせれば「パパはママのことを絶対的に甘やかしていた」そう。確かに、私や子どもがどこかへ行きたいと言えば、張り切ってすぐに車を出してくれましたし、私がやることに口を出すことは一切なく、いつもそっと静かに見守ってサポートしてくれました。そんなふうでしたから、夫がいた頃は、自分の運転で遠出をしたことなどありませんでした。

それが、夫が亡くなって5か月後、バスも電車も走っていない奥地へ住む知人宅へ、自分の運転で向かわざるを得ない状況がやってきました。もちろん道もわからないし、カーナビも使ったことがない。けれど、ナビに目的地を入力して言われるがまま走ったら、すんなり到着。

「あ、ナビがあれば、私はひとりで生きていけるかもしれない」