53歳で突然夫を亡くして以来、およそ20年間ひとり暮らしを続ける料理家、足立洋子さん(72歳)。気力や体力ががくっと衰えたという「70代の壁」に直面しながらも、日々を明るく前向きに過ごしています。そんな足立さんが、自分がご機嫌になるための毎日の工夫を1冊にまとめた書籍『さあ、なに食べよう? 70代の台所』(扶桑社刊)より、急にひとり暮らしになってしまった時期のこと、そこからまた歩き出せたきっかけについて紹介します。

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3人暮らしから、急にひとり暮らしに

足立洋子さん
およそ20年間ひとり暮らしを続ける料理家、足立洋子さん(72歳)
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娘は中学から親元を離れて東京で寄宿舎生活をしていましたので、長いこと夫と息子、私の3人暮らしが続いていました。息子は地元・苫小牧の中学、高校を卒業して、札幌の大学へ進学。しばらくは高校教師を目指していました。その息子もついに新たな道を見つけ、家を離れることに。空の青さが眩しい、秋晴れの朝が旅立ちのときとなりました。

結婚以来、朝の早い仕事だった夫は、朝食は自分で支度して済ませるのが常でした。「僕の食事をつくるためにわざわざ早起きしないで」と言う彼に、「はーい!」と素直に従って30年。それは夫の退職後も変わらず、彼の起きる時間に私は寝ているのが当たり前、という感じ。

けれど、どういうわけかこの日に限っては、私が朝食を準備したのです。ご飯派の夫におみそ汁をつくって、「パパ、いよいよ2人暮らしが始まるね」とひと言。

「ちょっと恥ずかしいね」と夫。
「でもすぐに慣れるね」と私。

朝はパン派の私は、おそらくパンを食べたのでしょう。息子を見送ったあと、初めて夫と2人で囲む、なんだか照れくさい朝ごはんは、しかしこれが最後の出来事ともなりました。その日に、夫が急逝したのです。今でも鮮明に覚えている、10月いちばんの寒さを記録した日。澄み切った青空が美しい、2005年10月の終わりのことでした。

結婚して間もなく妊娠した私は、当時は夫の仕事の都合もあり、私だけ実家に住んでいました。だから夫婦2人きりの朝ごはんはもちろん、まず2人で暮らした経験がない。3人暮らしから、「さあいよいよ初めての2人暮らしになるぞ」というタイミングで、一気にひとり暮らしとなったわけです。