●10年以上の自己流減塩食の末、たどり着いた綾菜流「万能氷だし」

そんななか、綾菜さんはがん患者の親友Aさんを通じて、ついにキーパーソンに出会います。

「Aさんの食事指導をしていたのが、国立循環器病研究センター(以下「国循」)の脳神経内科部長・猪原匡史先生でした。同じ国循の栄養管理室室長の田中勝久先生や、そのほかに栄養士で料理家の田村つぼみさんにも出会いました。この先生方に減塩の基礎知識をはじめ、健康寿命を延ばすためにできることを学ぼうと、北大阪健康医療都市(以下「健都」)に通うこと9年。そこで教わったのが、『うま味がなければ減塩食は続かない』という事実です。

80歳で食事制限するのは本人にとっては酷なこと。食べることの楽しさ、おいしさは本当に大事だから、うまみがある料理にしていこうと、田村さんと懸命に考えて、考えて、ようやくたどり着いたのが、綾菜流『万能 氷だし』です」

加藤綾菜さんの「万能 氷だし」
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「万能氷だし」とは、玉ねぎとしょうがをすりおろして小鍋に入れ、そこに水と酒かすを入れて火にかけ、かつお節としょうゆを少し注ぎ、ざるで濾して製氷皿で凍らせたもの。キューブ1個の塩分は、わずか0.3g。1食1個、1日3個使っても塩分量は1g未満です。

「この氷だしのすごいところは、和洋中もエスニックも全部使えること。しかも、おいしいんです! 初めて加トちゃんに出したとき、減塩料理と気づかず『めっちゃおいしい』と言って食べてくれたのには感激しました。加トちゃんのお友達で同じく減塩中の高木ブーさんにもお出ししたら、『おいしい! これ、減塩じゃないでしょ?』と。『いや、これ減塩なんよ』と言ったら『これなら食べられる』と言ってくださったんです。

以来、我が家では1日3回はこの氷だしを使った料理を出しています。毎週末に製氷皿を2~3皿(20~30個分)つくり置きすれば、あとは料理のたびにキューブを取り出して食材と和えたり煮物に入れたりするだけなので、簡単で続けやすいんです」

綾菜さんが田村つぼみさんとともに編み出した「万能氷だし」レシピは、28品以上。なかでも茶さんがお気に入りなのは、和風おろしハンバーグだそう。

万能氷だしでつくったハンバーグ

「このハンバーグの塩分量は、一般的なハンバーグの5分の1程度。にもかかわらず、めちゃくちゃおいしいと評判なので、よくつくっています」

●減塩食にしてから血圧は70mmHgもダウン、さらに――

今は茶さんも隠れてしょうゆをかけることもなくなり、健康状態はすこぶる安定。

「意外にも、結婚生活12年のなかで、80歳の今の数値がいちばんいいんです。例えば、以前は降圧剤を飲んでいても196mmHgだった血圧が、今、125~130mmHgの間に落ち着いていますし、尿たんぱくやクレアチニンなど腎臓関係の数値もすべて正常になりました。

もちろん、今でも焼き肉店に行きたいと言えば、連れて行きますよ。でも本人も健康意識が高まってきているし、体質も変わってきているから、最初はサラダから食べ始めるんです。こってりしたお肉をたくさん食べても、翌日氷だしを使った減塩料理を食べれば大丈夫。一週間単位で見ると血圧は非常に安定しているんです」