●厳しい自然にも対応できるシンプルな道具を愛用
もうひとつ、東京での生活から変わったのは生活道具。
人里離れた森の中、電化製品が故障してもすぐに修理できる保証はないし、厳しい自然のなかでどんな不具合が起きるかもわかりません。東京の家では使っていた食洗機も山小屋には設置せず、ごく簡素な機能のキッチンに。掃除をする際も掃除機ではなく、主にほうきを使うようになりました。
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「山暮らしに合う家事の方法や道具を、生活しながら少しずつ整えていきました。洗濯物が乾きづらいことも暮らしてみて初めてわかったこと。天気が変わりやすく、とくに夏は雨がよく降るんです。だから乾きやすい服を選ぶようになったし、シーツ類は思い切ってクリーニングに出すことにしました」
そうやって試行錯誤しながら毎日の家事を簡素化する分、梅干しなどの保存食づくりや石けんづくりなどを楽しんでいるといいます。
「庭仕事もつい夢中になって何時間でもしてしまいます。これらは家事というより、私にとっては日々の楽しみ。省略できることは工夫して省きつつ、好きなことにはじっくり取り組みたいと思っています」
自然が相手の暮らしでは天気によって予定が変わることもしょっちゅう。加えて庭仕事や冬支度など、季節ごとの作業もあります。家事をシンプルにすることは、好きなことを楽しむ時間をつくるためにも、また山暮らしでのさまざまな状況の変化に対応できる「余白」をつくるうえでも、大切な工夫なのかもしれません。
『別冊天然生活 小川糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし』では、小川さんの四季ごとの暮らしの工夫をたっぷり紹介しています。