とにかく子ども最優先。「なんとか成人するまでは…」
病院送りとなったさやかさん。夫からの暴力ということで、写真を撮って証拠を残しました。警察も来て、両親は事情をそのまま説明したようですが、最終的に、被害届は提出せず。
「子どものことがいちばん大きかったです。上の子たちはもう小学校にも上がっていましたし、父親が暴力で逮捕されても世間体が悪すぎる。幸い、子どもは寝ていてなにも知らないので、それなら知らないままでいい。親の都合で、多感な時期に離婚するのはもちろん、転校させたり、名字が変わったりして、苦労をさせるのもいやだという思いもありました」とさやかさん。
夫の暴力行為を見たご両親はもちろん、「すぐ離婚しろ」と言いました。
「でも子どものためとはいえ、今はまだ離婚しないと決めたのは私。夫もなんだかんだ、金銭感覚はおかしいものの借金を増やすことはなく、まじめに働いているという点も大きいです。本業の仕事のほかに、早朝に新聞配達のバイトをかけもちして、お金の工面に奔走しています」
さやかさんと子どもたちの家出は、2週間ほどで終わり、別居はやめて家に帰ることに。夫は猛省して、何度も謝ってきたそう。
「いくら謝っても私の実家で大暴れして、包丁を持ち出したり、私にケガをさせたという事実は消せません。もう夫に対しての愛情はなくなりました」
●まだ40代。セックスのない人生をどう思う?
すべての画像を見る(全4枚)「子どもたちの父親だから」という理由だけで、現在も婚姻関係は継続し、夫も同じ家で一緒に暮らしているものの「いずれ出て行ってもらう」と割りきった関係であることを強調するさやかさん。レスの状況が17年以上も続いていることに対し、つらさはないのかも聞いてみました。
「もっと若かったら、いろいろ悩んだのかもしれません。けれど50代が見えてきて、子どもも4人いるとなると、夫婦生活はなくてもぜんぜん大丈夫。むしろ、恋愛結婚でこんな大変な目にあったので、夫と早く離婚して、人生の後半は自分のために時間を使いたいですね。それが楽しみです」
一方、頑なに別居も離婚もいやがっていた夫は、この状況をどのように受け止めているのでしょうか。
「浮気している様子はありません。たまにしたそうに寝室へくることがありますが、『本当に外でやってくれていいから。もうしたくない』と、ハッキリ拒否しています。夫は納得していない感じですね。実家での事件を、私自身、長い年月が経っても許せないというのも大きいし、そのことも夫はわかっていて、もうあきらめている状態です」
●逃げられるなら、すぐに逃げて!
現在、いちばん下の子は高校生。
「ちゃんと成人して、家から巣立ったらそこで夫との夫婦関係も終了。子どものために離婚しないで世間体を保っているだけですよ」というさやかさんですが、同じ多産DVの境遇に陥っている女性がいたら、逃げるという選択肢をもっと積極的に考えてほしいと訴えます。
「私は4人子どもを産んで、実家に逃げたことで目が覚めました。それでレスになったことなんか1ミリも後悔してません。もし逃げられる場所がなくても、今は行政とかに相談すればなにかしら方法を教えてくれるはず。とにかく1人で抱え込まないでほしい」
子どものために離婚を一時的に回避し、夫とは“レス”のまま暮らしているというさやかさんのお話はこれで終わりです。なかなか人には相談しづらい夫婦問題。内閣府がやっている「DV相談プラス」では、電話もメールも24時間受付してくれていますし、「DV相談ナビ」(#8008)なら、最寄りの相談機関につながります。もし「これはDV?」と悩んでいる方がいらっしゃったら、相談することも考えてみてください。