●わからないことは、プロに頼ることも大切

今日はどうなんだろうと、ぼんやり考えながら駅近くのスーパーに出向いた帰り道。視線の先に小さな人だかりを見つけます。“猫の譲渡会”と書かれたのぼりの奥には、簡易テーブルとその上に置かれた2つのケージ。

吸い寄せられるように近づくと、里親を探す猫たちと並んで“TNR”の看板。TNRとは、T=Trap(猫を安全に捕まえて)、N=Neuter(不妊・去勢手術をして)、R=Return(元の場所に戻す)活動のこと。なんとなく聞いたことはあったけど、自分にとって身近ではないとそれ以上に興味を示してきませんでした。

都合のいい話かもしれませんが、もしかしたらこの活動であの猫を助けられる? 心強い味方を見つけたような、希望の光が差し込んだかのような瞬間でした。近くにいたスタッフさんに声をかけ相談すると、「それは心配ですね」と親身になってくれて緊張の糸がほぐれていきます。

そこからはすぐさま捕獲して病院へ連れて行き、怪我の状態を診てもらうのと同時にTNRもすませようと、とんとん拍子。なんと数日後には、捕獲器を持ってわが家まで来てくださったのです。

●捕獲器と猫のその後…

保護猫活動のボランティアさんに、捕獲器の設置方法や使い方を教わったのですが、どうやらそれほど難しくないみたいで、ホッと一息。その夜、教わったとおりに鶏ささみを少量仕込んで物陰から猫を待ちます。

捕獲器
捕獲器は、まわりを覆ってあげると猫がパニックになりにくいそう
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すると、1歩1歩なかに入っていく猫。しかし、用意した器が大きかったせいで、猫が入る前のちょっとした振動によってガシャン…。猫は慌てて、怯えて逃げて行ってしまったのでした。助けようと思ってしたことが裏目に出て、恐怖心を植えつけてしまいました。

かわいそうなことをしてしまった…。それからというもの、ちょこちょこ顔を出してはくれるのだけど、捕獲器には近寄らない猫。警戒心マックス。その日を最後に、5日続けて姿をあらわさなくなりました。

「もう、来てくれないかも」反省と後悔に苛まれること6日。こちらに向かってくる猫の姿が! 夢のような光景です。よく見ると、さくら耳(動物病院でTNRを済ませた目印として、耳の先端をさくらの花びらの形にカットする)になって…。

保護猫団体に報告すると、近所で保護猫活動をされているほかの方のところで捕獲されたのでは、と。相談の結果、外の暮らしが長い&人慣れが難しそうな猫だったため地域猫として受け入れてもらうのはどうかという結論に至ったのでした。

ミケ子
「ご飯をもらえる」と知ってか知らずか…

三毛猫の女の子なので、名前は「ミケ子」。今では筆者のみならず近隣の方も温かく見守ってくれるようになり、別宅でもおいしいごはんをもらっているそう。TNRについての賛否、地域猫に対する意見はそれぞれだけど、ミケ子にとっては今日を生きる術となったようでそれなりに健やかに過ごしています。