SDGsで僕らができるのは小さな世界で事例をつくること

集合住宅で実証実験を実施
プロトタイプとなる集合住宅で実証実験を実施。寒さや積雪の耐久性をテストし、ニセコミライの家づくりに生かされる
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たかまつ:ニセコミライの開発は現在、どういう段階なのでしょうか?

田中:全体を4工区に分けていて、第1工区の造成工事が終わり、今年から1棟目8戸の建築工事が始まります。年内に完成し、来春入居予定です。

たかまつ:ニセコミライはどのようなまちを目指しているのでしょうか?

田中:「こういうまちにしたい」という理想を掲げることはしていません。住む人が主役になるまちになってほしいですから。もちろんSDGs的な観点、「持続可能なまち」というコンセプトは守っていきたいとは思っています。

たかまつ:そこは期待しています。

田中:私たちはコンセプトのひとつに「混住」を掲げています。若者も子育て世帯も高齢者も、いろんな世帯が住める受け皿を用意し、「住まいの流動化」を実現したい。それが「持続可能なまち」ですから。その点では、敷地内の共有スペースでイベントを仕掛けることは必要かなと考えています。

たかまつ:アイデアはありますか?

田中:たとえば、羊蹄山を眺めながら住民みんなでジンギスカンをしたり、地元農家の野菜が買えるマルシェを開催したり。こうしたことを住民と一緒に、時代とニーズに合わせて続けていくのが目指すまちの姿なのかもしれません。

たかまつ:めちゃくちゃすてきです。多彩な人との交流は生活を豊かにしますし、心理的な孤立の予防にもなります。都市部は多様性があるようでないんですよね。先日、居住区のある会議へ参画したのですが、アクションを起こすにはコミュニティづくりから始めなくてはならず、ハードルの高さを感じました。人は多くても、結局、ネットを介さなければつながれないんだって。

田中:多様性はニセコのキーワードのひとつです。ただ、僕らがダイバーシティを意識しているわけではなく、必然的にそうなっているんです。いろんな人がごちゃまぜになって、共存共栄していけるまちになればいいし、それが、ルールで縛られるのではなく、相互扶助やSDGsをベースに、住民みんなで考えてつくっていけたらいいなと思います。

 

イベント
新しいまちづくりを、地元密着で推進するため、住民を巻き込んでのイベントを不定期で開催している

たかまつ:おふたりはSDGsをどのように受け止めていますか?

芝山:ウェルネストホームは、創業から健康で快適に住める長持ちする住宅をコンセプトに家づくりをしてきました。その結果、SDGsの目標11個をクリアできた。SDGsをことさら意識せずとも、中長期的に「真に大切なものはなにか?」を考えて行動することで、環境への配慮は達成できるのだと思います。

たかまつ:私はやはりSDGsウォッシュが気になります。SDGsは目標であり、目標は達成することに意味がある。未来像を描き、実現のための道筋を考えて行動することが大事。バックキャスト思考がSDGsには欠かせません。実現可能な目標を掲げて達成できたと喜んでも本質ではないなって。

田中:皮肉なことですが、日本は言葉を広げるのはとても得意だなぁ、と。欧州では「SDGs」という言葉自体の浸透度は日本より低いですし、SDGsのバッチをつける文化も日本だけです。

たかまつ:本当にSDGsは17項目の暗記科目になってしまっています。

田中:やはり、国の制度や仕組みといった大きなところを変えなければ、抜本的な変革は難しいでしょう。他方で僕らができることはなにかというと、小さな世界において事例をつくっていくことです。成功事例をほかへ広げていくこともまた、日本人が得意とすることですから。

たかまつ:ニセコミライも成功事例のひとつになっていくのでしょうね。

田中:ニセコミライを完成させ、「ニセコにいいまちができた」で終わろうとは思っていません。ニセコの成功モデルをほかの農村や都市部に広げていく。そして、国を変えていきたいと考えています。

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