多部未華子さんが俳優になったきっかけは少女の頃に見たお芝居「アニー」への憧れ。舞台でキラキラ輝く人になりたくてレッスンを積み重ね着々と歩んできたものの、常に目標や課題に追われていました。しかし、結婚してからはひとつひとつゆっくり取り組めるようになったそうです。次に挑むのはNODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』。
『兎、波を走る』多部未華子さんインタビュー
すべての画像を見る(全6枚)舞台は稽古と本番、3か月くらいの長期スパンの仕事で地方公演もあります。今回は、家事や子育てとの両立をどうするか、多部さん流の心がまえを伺いました。
●家族と相談したうえで決めた、舞台の出演
「やりたい仕事を家事や育児のためにどれくらいセーブするか、正解がないからこそ悩みますよね。結局は人それぞれで、自分が決断することなのかなって…」
そう語る多部さん。30代、生活サイクルが大きく変わったなかで、約4年ぶりに舞台出演を決めました。
「舞台は大好きで年に1回は出たいけれど、稽古や地方公演などを入れて、2~3か月の長期スパンになるので、なかなかやろうという決断ができなかったんです。ですが、ずっと前から野田秀樹さんの演出を一度は受けてみたいと思っていたところ声をかけていただき、それが決断する大きなきっかけになりました。
もちろん、家族に相談して話し合ったうえで決めました。家族が、私のやりたいという思いを受け止めてくれたからこそ、チャレンジできる。やりたいという強い気持ちがあるから家族に相談し、そうでなければきっと黙っていただろうからと、この強い気持ちを理解してくれたのだと思います」
映画やドラマで見る多部さんの眼差しはいつも真剣。その強い意思のこもった眼差しが演技を迫真にします。NODA・MAPの舞台『兎、波を走る』の詳細を聞いたとき、多部さんはこんなふうに思ったそうです。
「驚きと、重さと責任。……でもわくわくもありました」
野田さんの演劇はいつも夢のような世界が広がって、さらにその先に思いがけない驚きが待っています。また、実力派の俳優が参加することでも有名です。
「以前、野田さんが書いた脚本を、松尾スズキさんが演出した『農業少女』(2010年)という舞台に出たことがあったのですが、その頃の私は、ミュージカルや吉本新喜劇を好きで見ていただけで、それ以外の演劇に詳しくなくて。この舞台に立って以来、ほかの舞台も見にいくようになり、野田さんの作品にも何作も足を運んでは、いつか自分もやってみたいなと思っていました。
舞台で演じている方たちがとても楽しそうに見えたんです。『農業少女』のときの私はとにかく必死で考える間もなく日々が過ぎていったので、今回は、野田さんの作品を深く理解して、味わって、楽しめたらいいなと思っています」