●旧来のお弔いは寂しい。だからイオは「ハワイへ行った」と思うことに

猫沢エミさんと愛猫のイオ(『イオビエ イオがくれた幸せへの切符』より)
猫沢エミさんと愛猫のイオ(『イオビエ イオがくれた幸せへの切符』より)
すべての画像を見る(全6枚)

そして『イオビエ』で描かれているのは、イオを見送ったことで生まれた、猫沢さんの新たな死生観です。本著ではイオは、猫沢さんの初代愛猫のメス猫・ピキが運転する天国タクシーで、ハワイに旅立ちました。天国タクシーが向かったハワイは、猫姉妹の魂の仮住まい。いつも晴れていて楽園のような場所です。

猫沢:これはイオの死だけではなく、この前に私自身が両親を看取ったことも関係があります。納骨のために久しぶりに実家のお墓を訪れたんですね。旧家の古いお墓なもので、じめじめとしていて、その場にいてもなんだかハッピーな気持ちになれなかったんです。それに動物も人間も、亡くなった途端に生きている者と引き離された存在にされてしまう今の習慣が、私には馴染めない部分もあって。

もちろん、既存のお別れの仕方で心の整理がつく方は、それがいいのだとおもいます。私の場合は、イオと出会ったこと、彼女の病と向き合ったこと、そしてイオがこの世を去ったあとも、すべて大切にしたいことなので。

取材中

どうして葬らなきゃいけないの? とも思っていて。彼女の遺骨は今も私の側にいますし、魂は、私の“長女”にあたる先代猫のピキと一緒に、ハワイへ行っていることにしたんです。そのほうが、私にとってはハッピーに思えるんですよね。

今、2匹のオス猫とパートナーと共に暮らしていますが、彼ともよく話しています。最後に残った人が、猫と人間を自然な形で大地に返そうねって。私の理想は、灰をオレンジなんかの木の根元に撒いてもらい、また大地の栄養になることです。