2022年2月に、以前暮らしていたパリに50代で二度目の移住をした、ミュージシャンで文筆家の猫沢エミさん。

愛猫家としても知られており、彼女が渡仏する前に東京で出会い、看取った猫、イオへの思いを綴った最新著書『イオビエ イオがくれた幸せへの切符』(TAC出版)も、静かな共感を得ています。そんな猫沢さんが50代になってパリへ移住して改めて感じたこと、日々の暮らしや、パートナーシップについてもお話を聞きました。

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猫沢エミさんインタビュー。パリは、人の感情を肯定してくれる「ヒューマン」な街

猫沢エミさん
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――猫沢さんがパリに住まいを移されてから一年がたちました。今はどんな暮らし方をしていますか?

猫沢エミさん(以下、猫沢):まだ暮らしのベースをつくっている途中ですが、3食をきちんと食べる、家を快適に整えるなど、基本的なことは日本にいた頃とそこまで変わっていないかもしれません。ただし移住して最初の一年は、一度目の在住期を綴った『パリ季記』(復刊版)のリライト作業と最新刊『イオビエ』の執筆に集中していました。

そんなわけで、とくに秋の半ばぐらいまでは、ほとんど遠出することがなかったんです。本の校了が終わり、久しぶりにメトロに乗ったときに『あ~、ここはフランスだったんだよね!』と、実感したぐらい。パリのメトロっておもしろいんですよ。その中で歌っている人もいれば、踊っている人もいる。ミュージシャンが音楽を奏で始めたら、メロディに合わせておばあちゃんが体を動かし始めて、そんな彼女の姿に周りの人たちも『素敵ね!』って。人々の行動も、心も、とてもヒューマン(人間らしい)なあり方だと思います。

歩く

移住して2年目の今は、そんなパリの地域や人達の中に、もっと入っていきたいですね。30代の頃に一度住んでいた場所で、トータルでは20年ぐらいフランスと日本を行き来していたので、そのなかで知り得た友人たちも大勢います。そして一緒に暮らしているフランス人パートナーもいるので、たった一人で生きているわけではないんですけれども。せっかく腰を据えて暮らすことを決めたのだから、もっと地元の中に溶け込み、今までとは違う人間関係にも飛び込んでいきたいと思っています。

――具体的にやってみたいことはありますか?

猫沢:いつか市民オーケストラに入りたいですね。小さい頃にヴァイオリンを習っていたので。地域のコミュニティの一員として、みんなで音楽を楽しみたいです。