女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地であり、その後も定期的に訪れるスウェーデンのこと(フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと)などを写真と文章でつづります。第22回は、50代後半での「引っ越し」について。

猫とフィーカ
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57歳の引っ越し物語<川上麻衣子の猫とフィーカ>

自他ともに認める「引っ越し魔」の私。18歳でひとり暮らしを始めてから現在までに暮らした部屋は、ざっと思い出せるだけで13か所。個人事務所やショップの移転も含めると15か所は軽く超えます。単純計算しただけでも2年半に一度は引っ越しを繰り返していることになり、確かに振り返れば常に移動している印象があります。

白いデスクの前に女性
昨年引っ越した新しいショップ兼サロンの1階ショップの一角にて

近々では、昨年5月に谷中に構える店舗とサロンを1か所に移転させるという大がかりな引っ越しを終え、このときにさすがに50代後半という年齢を実感。引っ越しで消耗した体力の復活までに、思いのほか時間がかかりました。

還暦以降は、どこか落ち着ける場所を決めて穏やかに生活をするための準備を…と、本気で考え始めたそんな矢先。

先日仕事を終えて、スタッフと軽く一献していたところ一通のメールが着信。何気に開いてみるとそこに飛び込んできた文字は「オーナー様から契約終了のお申し出があり内容証明を送ります」とのメッセージ。

一瞬意味がわからず「えっ???」となりましたが、すぐに理解はできました。

●コロナで伸びた「定期借家賃貸」の契約終了日が…

現在私は谷中の店舗にほど近い場所に仮住まいという形で部屋を借りて、暮らしています。ほとんどの日々を店舗やサロンで過ごしていることもあって、さほど広くはありませんが寝るだけに帰る場所としては最適の場所です。

白を基調とした部屋
谷中にある仮住まい

3年前に、いくつもの不動産屋に相談しながら、ようやく見つけた物件です。

なにしろ店舗のあるこの谷中周辺は、最近人気の「谷根千エリア」と呼ばれているだけあって賃貸物件を探すのは中々に難しい作業でした。諦めかけていたところで見つけたこの物件は「定期借家賃貸物件」。

更新契約ができない為、メリットもデメリットもありますが、今回見つけた物件はオーナー様が海外に赴任されているために、帰国が決まるまでという条件で貸していただいていました。

部屋に猫
愛猫もお気に入りの空間

越してきた当初は、2年で出なければならないことも覚悟のうえでしたが、その後コロナ禍となり、1年の更新契約を2回交わしたあたりで、なんとなく気持ちもゆるんでいたのかもしれません。少なくとも5か月後には退去することが条件なため、現在少々焦りつつも、再び物件探しという大きな仕事が増えたところです。

まぁ、そうは言いながらも元来の引っ越し好きではありますから、内心ワクワクしていないわけでもありません。まだ5か月という猶予もありますから、仕事の合間の物件探しを楽しみたいと思っています。

●50代以降の住まいに「広さ」は必要ない?

そして引っ越しの醍醐味はなんといっても、荷物の整理です。自分の持ち物を見直す絶好のチャンス。処分するものと残すものを見極めなくてはなりません。

リビングが広い部屋
以前暮らしていた広いリビングの住まい

若い頃は、広い部屋に憧れ、そのことを1つの目標として仕事をがんばってきました。都会で暮らすことを考えると、収入のほとんどを家賃に奪われてしまいます。それでもやる気に溢れていたのは、若さゆえの大事な原動力だったのかもしれません。

しかし年齢を重ねるうちに、広い部屋で暮らすデメリットが目立ち始めてきました。

ものが増える。掃除が大変。結局落ち着く場所は限られている…。冬は寒い…。などなど。もちろん、ゆとりをもってのんびりと暮らしたいという思いはありますが、今のところ私にとってそれは近い将来、還暦後に都会ではなく自然豊かな場所で探したいなと思っています。願わくばそれが最後の引っ越しとなればよいのですが…。