●年末、帰宅してみると…

みあげる猫
抱っこしていると、ときどき顔を見上げてくる仕草がかわいかった
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そして、2022年12月28日。

少し前に母はすでに帰省してタルボくんは私と2人で年末を過ごしていましたが、その日は仕事の挨拶回りのあとに友人たちとの忘年会の予定があり、タルボくんにたくさんの水とえさを用意して出かけました。

このとき、私は年末のわりに暖かな日だったため、暖房をつけずに出かけてしまうというミスを犯しました。

深夜12時に帰宅してみると、タルボくんは母のベッドの上に律儀に座って待っていました。「タルボ、遅くなってごめんね」と声をかけると、階段状にしてあったクッションを滑り落ちるようにしておりてきて、ゴロゴロと喉を鳴らしました。ふとみると、前足がありえない方向に折れ曲がっているではありませんか。そして、いざ立とうとしても、立てなくなっていたのです。

「タルボの足が折れてしまった!」

そう思った私は、街道沿いに見かけていた救急動物病院にタクシーで駆け込みました。診断は、タルボの足は折れているのではなく、衰弱してしまって立てない状態だという、思ってもみなかったものでした。

「体温も下がっていて危険な状態です」。そう告げた獣医師の言葉に、血の気がひいていき、手先が凍りつきました。「エアコンをつけ忘れたせい?」と、罪悪感が押し寄せます。藁をも掴む思いの私に、病院はたたみかけました。

「血液検査、レントゲン、点滴、入院費で10万円ですが、よろしいですか?」

私は、頷くしかありませんでした。

しばらく待っていると、扉の向こうからバリカンの音が聞こえ、タルボのワーオワーオという低い悲鳴が聞こえました。私はもうたまらなくなって、「やっぱりいいです、連れて帰ります」と受付に叫ぶと、処置はなにもせずにそのまま病院を去りました。

治療費が高いのはさておいても、瀕死の猫にバリカンをして検査をするというのは狂気の沙汰に思えたからです。これもあとからわかったことですが、そこはあまり評判のいい病院ではありませんでした。

もしものときのために、信頼できる救急動物病院も調べておくべきでした。

●かかりつけの病院での診断

翌日29日の朝、タルボをもらったかかりつけの病院へ連れて行きました。

「腎臓かなぁ」。その獣医師の言葉で、私はようやく、タルボの腎臓が悪いことを知ったのです。

腎不全というのは、尿をつくる機能が奪われ、毒素を排泄できなくなって尿毒症になり、命を落とす病気です。腎機能は一度失われると回復は見込めませんが、点滴をして水分を補給し、尿から毒素を排出することで症状を緩和し、命をとりとめることができます。

タルボにも点滴の処置がされ、帰宅してしばらくすると、横たわったまま大量のおしっこをしました。寝たきりのままではありましたが、気分がよくなったのか、チュールやスープ状のえさをぺろっと食べていました。

30日の朝、少し気分がよくなったのか、まだ立ち上がれはしないもののキョトンとしたいつもの顔が復活。その日も病院へ行き、点滴をしてもらいました。

点滴のあとはぐったりするものの、その日の夜には立てるようになり、そばに置いたトイレでおしっこをすることもでき、ウェットフードを少し食べてチュールも勢いよく食べました。

「もしかしたらよくなるかもしれない」、このときは期待をしていました。しかし、お別れのときは刻一刻と近づいていたのです…。

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後編では、massacoさんとタルボくんとの年始についてつづっていただきました。massacoさんがタルボくんとのかけがえのない日々で学んだこととはなんだったのでしょうか。