マイホームを手に入れる方法として「買取再販住宅」が注目されています。買取再販住宅とは、不動産業者が、既存の住宅を安く買い取り、リフォーム・リノベーションして建売住宅のように販売する住宅のこと。新築と変わらない家が、かなり割安で販売されるケースもあります。サラリーマンのかたわら不動産の大家をし、年間20棟以上の築古物件を内覧している、宅建士で二級建築士の日刊住まいライターが、自身の経験も交えて語ります。

空き家
街を歩くと目につく空き家。この活用に国も本腰を入れ始めている
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空き家が増えるなか、買取再販住宅の取り引きも増加

人の住まなくなった空き家や中古住宅を、安く買い取ってリフォーム・リノベーションを行い建売住宅のように販売する買取再販住宅が増えてきています。国が空き家も含めた既存の住宅ストックの利活用を推進していることもあり、実際にその成約件数も増加傾向にあります(※1)。

耐震化、バリアフリー化、省エネルギー化などの要件を満たしていれば、住宅ローン控除や不動産取得税、登録免許税(※2)の軽減をといった税制上の優遇を受けられます。これも大きな魅力でしょう。

また、買取再販住宅は、個人が所有する中古住宅を購入するわけではなく、不動産会社から直接購入するので、仲介手数料もかかりません。

新築並みにきれいな仕上がりとスペックを備えている買取再販住宅なら、同等レベルの新築よりも、かなりリーズナブルだといえるでしょう。

※1.矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査」によると2021年の中古住宅買取再販の成約件数は前年比8.3%増の3万9000戸と予測

※2.国土交通省「買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置」。個人が宅地建物取引業者により一定の質の向上を図るための特定の増改築等が行われた既存住宅を取得した場合に、所有権移転登記に係る登録免許税が軽減される(適用期限:令和6年3月31日)

 

買取再販住宅を検討する人は増えている

既存住宅

買取再販住宅を扱う業界も、新築と扱っているハウスメーカーと同様に、全国で展開する大手の業者と、地場で1棟1棟を手掛ける工務店といったような感じに分かれます。また、買取再販住宅を得意とする多くの業者は、専業大手、建設業者、宅建業者などに分類されます。

内容としては、空き家などを安価に仕入れ、水回りや電気など設備類の更新とクロスなど表面的なリフォームで再販するものから、フルリノベーションして新築と変わらない省エネ性能を備えた住宅として再販する業者、昔ながらの古民家を改築して再販するようなスタイルまで多岐にわたります。

コロナ禍以降、働き方、暮らし方が大きく変化したことによって住宅への関心高まり、その結果住宅特需が発生し、住み替えの動きが活発化しています。また住宅ローン金利は、上昇傾向にあるものの、歴史的には低水準。子育て世帯などの若年層を中心に購買意欲が衰えていない状況です。

しかし、コロナ禍以降の資材の高騰もあって予算の都合上取得が難しくなっているのが実情。不動産に関わってる筆者は、新築から手頃な価格の建売住宅、建売住宅から、さらに割安感のある買取再販住宅へいう流れがきていると、肌で感じています。

 

中古住宅を購入しリフォーム業者を手配するのは大変!

リフォーム中の既存住宅

視点を変えると、それならば自分で中古住宅を購入して、リフォーム業者を探してリフォームすればよいのではないかと思うかもしれません。

ただ、これには打ち合わせ、諸々の手続きや段取りなど、想像以上の手間と時間がかかります。状況によっては、新築を建てるときと同様に手間がかかることもあります。また、目に見えないリスクがあるかもしれません。

上の写真は、過去に筆者自身が投資物件として手掛けた物件です。想定もしていなかったことで、本来はそこにあるはずのない、コンクリートの便槽が出てきました。このことで、時間もリフォーム費用もアップすることに。

その点、大手の買取再販業者のケースでは、中古住宅を買い入れる段階でシロアリや躯体のチェックといった基本的な建物調査が行われ、隣地境界など立地やインフラのなどの問題についても確認が行われているなど、素人ではなかなか判別の難しい問題がクリアされています。

リフォームについても材料の仕入れや施工業者などが、一定の水準でとりまとめられていますから、新たにリフォームする必要がありません。購入後すぐ住み始められるというメリットは大きいと言えるでしょう。