●将来、救急搬送に「冬眠」を役立てられないか?

睡眠
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とはいえ、研究は難航。動物は1年に1回しか冬眠しないので、研究する機会が年1回しかないと、研究もなかなか進みませんよね。さらには、そもそも砂川博士が大学院生になったころには冬眠を研究している研究室がなく、「睡眠」を研究することになりました。しかし、この睡眠の研究はあとでとても役立ったそうです。

まだまだ冬眠の研究者は少ない状況ですが、砂川博士は次のような未来を思い描いています。それは、「冬眠誘導装置」や「冬眠薬」のようなものがもしもできたら、重症患者、特に子どもの重症患者の命を守れるのではないか、という未来です。

「救急車に乗っても搬送できる病院が見つからなくて助からない、といった命を救いたいのです。重症患者を救急車に乗せたらすぐに冬眠をさせる。そうすれば代謝が落ちるので、たとえば30分以内に手術をしなければ危ないという人が、3時間まで大丈夫ということになるかもしれません。そうすれば病院をゆっくりと探せますし、長い時間移動ができるので遠くの病院も選べます」

●毎晩、睡眠の代わりに冬眠できるようになる未来が?

今は少子化ということもあり、重症の子どもを診察できる病院は多くないそうです。

「どこで病気が発症したかで治せるかどうかが決まってしまう。言うなれば恐ろしい“場所ガチャ”(カプセルトイのガチャガチャのような運任せ)です。その状況を一刻も早くなくしたいのです」

現在は、マウスの脳を刺激することで、冬眠の状態にすることができるようになったそうです! すごいですね。毎晩、睡眠の代わりに冬眠できるようになる未来が、砂川博士の描く最終形なのだそうです。

笑顔の子ども
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お医者さんでもあり科学者でもある砂川博士ですが、じつは子どもの頃からゲームが大好きで、今もプログラミングが趣味なのだとか。理科の勉強が苦手な子どもへのアドバイスもしてくれました。

「理科が苦手でもいいんです。興味があることにハマってください。私はたまたま興味をもったことがサイエンスだった、ただそれだけです」

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