「犬」と家族の日々をつづる「inubot回覧板」を連載中の写真家・北田瑞絵さん。北田さんにとってinubotで紹介している犬は、暮らしの中に光を灯してくれるような存在で日々たくさんの歓びを与えてくれますが、同時に犬にまつわる悩みや心配事も生じます。この「まほろば写真館」では、動物とともに生きている方からお話を聞き、動物との日常で大切にしている想いを教えていただきます。
おじいちゃん犬と過ごす。イラストレーター・てらおかさんの日常
すべての画像を見る(全23枚)第4回目は、カワイイ犬のイラストが人気のイラストレーターのてらおかなつみさんにお話を伺いました。
●イラストからも感じられる犬への温かい愛情
「小学生の頃から犬の絵を描くイラストレーターになりたかったんです」と話してくれたのは、今まさに国内外問わず活躍しているイラストレーターのてらおかなつみさん。
かく言う私もてらおかさんのファンである。てらおかさんの描く絵は、犬を犬として尊重されていると感じる。犬本来の美しさや強さ、優しさをデフォルメするでもキャラクター化するでもなく。あたたかなタッチであるがままの美しさを描いてくれる。
そしてイラストに描かれているのは犬だけど、その犬のそばにいる人の姿を想像できるほど暮らしのにおいとぬくもりが漂っている。てらおかさんが犬を見つめているあたたかな眼差しはそのまま絵に反映されているのだろう。
現在てらおかさんは関東で暮らしていて、昨年7月に保護犬を迎えました。この日、私はてらおかさんのご自宅に伺って、みんなで鎌倉へ出かけました。
てらおかさんはSNSに保護犬を迎えた出来事や絵日記も投稿していますが、犬の名前は明かしておらず“おじいちゃん犬”や“犬”と呼んでいます。本記事でも“犬さん”と称しますが、もちろんとてもすてきな名前があります。
私は犬さんとお会いするにあたって『無理に距離をつめようとしない・驚かせない』と考えていました。人にトラウマがあるかもしれないし、そうでなくとも一方通行のコミュニケーションになってはいけないし。
●愛らしい「犬さん」とご対面
待ち合わせ場所に着くと、てらおかさんとてらおかさんに抱えられている犬さんがいて、その光景がなんだかキラキラとフィルターがかかって見えた。
直接お会いした犬さんはあまりに愛らしくて、私は「かわいい、かわいいです」と連呼し、目尻は地面にくっつくほど垂れ下がってしまう。
さらにうれしい誤算があって、思いのほか犬さんは私に壁をつくらないでくれたのです。友好的に朗らかに迎えてくれたように感じました。カメラを向けたら興味津々にフンフン…とレンズに鼻を寄せてくれたね。
「臆病だけど、人が好きな子です」と、てらおかさんは紹介してくれました。私は犬さんの対応に喜びながらも一方で、どうしてこんないい子が保護される環境にいたのか考えずにはいられなかった。そして、「はじめて出会った頃の犬ちゃんは目に光がなくて、寂しそうでした」と続けて、こう話してくれました。
てらおかさんのSNSで一緒に暮らし始めた頃のまだどこかよそよそしい姿も拝見していたので、目の前にいる犬さんの表情を見て、てらおかさんに引き取られてからの過程について考えました。
あぁ、てらおかさんとの暮らしがこの子から恐怖や悲哀を遠ざけたのだろう、私に対する警戒心のほどきや伸びやかな表情からそう思った。
そして願わくばすべての犬がそうであってほしい、かなしみから遠くはなれて暮らしてほしい。