「SDGs」はだれのため?重要な当事者へのまなざし
たかまつ:「ヤドカリプロジェクト」は、まさに、SDGsの「住み続ける街づくり」「つくる責任、つかう責任」へのアプローチでもあります。白坂さんは、SDGsについて、率直にどのような印象を持っていますか?
白坂:SDGsの17項目はすごく大事で、みんなで理解して共有すべきものだとは思います。でも、「地球環境」や「SDGs」はだれのためのものなのか? そこに深い洞察がなく、ただ、メッセージだけが声高に叫ばれる状況には正直、違和感を覚えます。
たかまつ:本当に難しいですよね。
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白坂:僕、大学院の修了研究のテーマが、ベトナム山間部の少数民族の居住様式だったんです。彼らはもともと現地の木材で高床式住宅を建設する高いスキルを持っていました。でも、環境保護のために森林伐採が規制され、新しい住宅を建てられなくなった。そこで、行政はコンクリートブロックを積み上げてトタン屋根を葺いた住宅を無償供給したのですが…台風のたびに屋根が吹き飛んでしまう。まるで風土に合わず、生活の質の悪化を招いていたんです。現地に入り、そんな現実を目の当たりにした経験があって。
たかまつ:現地に入ることで、見えてくるものってありますよね。
白坂:「森林を守る」というのはSDGsの目標に合ったものだといえます。でも、その価値観だけでよしあしを評価しきれない局面は必ずある。「当事者に対するまなざし」は重要で、それは建築家としても意識するところです。
●教えてくれた人:白坂隆之介さん
REGION STUDIES代表。一級建築士。京都大学で宇宙物理学を学び、同大学工学部建築学科へ学士編入。シーラカンスK&Hを経て、2016年に独立。地元である浜松市で「ヤドカリプロジェクト」を始動