家を建てたくても、法律で禁じられている土地があります。「農地」もそのひとつ。しかし、手続きによっては宅地に変更できます。宅地建物取引士で、親の持っていた農地を用途変更して家を建てた日刊住まいライターが、その手続きをリアルにレポートします。時間はかかりましたが、さまざまなメリットがありました。
すべての画像を見る(全8枚)念願のマイホーム!でも敷地は家を建てられない農地
筆者は5年前に、ハウスメーカーで家を建てました。敷地は親が持っている「元農地」です。
農地法という法律で、住宅を建てることが禁じられている土地だったため、宅地に変更するまでに約2年という月日を費やすことになりました。
分譲地などに家を建てるケースと比較すると、かなり時間がかかりましたが、元農地ということで、周囲の環境もよく、予算を抑えて満足の家を建てることができました。
農地を宅地にするメリットは価格の安さ
筆者は、親の農地を宅地に転用して家を建てたわけですが、通常の土地購入を考えている人にもメリットはあります。それは土地の価格の安さ。
筆者が家を建てた土地を例にして説明しましょう。上の画像は、実際の固定資産税評価証明書のコピーです。畑(農地)の欄の固定資産税評価額を見ると、㎡あたり数十円程度。これが宅地になると㎡あたり数千~数万円に。ですので地価でみても数十倍から数百倍の価格差があります。
赤枠で囲った宅地は1327.96㎡で548万5802円であるのに対して、青枠の農地(畑)は、1404.00㎡で7万3808円。
ほぼ同じ面積なのに、なんと宅地と農地では固定資産税評価額が、74倍以上も差があることがわかります。
実際の売買の場合では、固定資産税評価額ほどの差はでませんが、農地として売買する場合と宅地として売買する場合では大きな差があります。
宅地よりもかなり安い価格で取得できる。これが農地を宅地にして利用する魅力です。
マイホームを実現しようと思ったとき、総予算のなかで土地の購入費用を抑えることができれば、その分、建築費に回すことができます。
農業を守る2つの法律をクリアしないと家が建たない
農地に家を建てられない理由は、おもに2つの法律にあります。
ひとつは、「農業振興地域の整備に関する法律」。いわゆる農振法で定められた「農業振興地域内農用地区域内」の農地。これは「青地」や「農振農用地」と呼ばれます。
通常青地(※)は、農業の振興が目的になっているので農地以外の利用をすることにかなり制限がかけられています。
もうひとつは、「農地法」です。農振法が農業を振興することを目的とするのに対して、「農地法」は、食料の安定供給の確保のために守らなければならない、農地の基本的なルールを定めたものです。
この2つの法律の制限をクリアしなければ、家を建てることはできません。
一般的には農地として維持していくべき土地は、税負担が軽くなるように設定されています。同時に農地以外に利用しようとすると、規制が厳しく手続きにはかなりハードルが高くなります。
筆者が建てようとした農地は、まさにこのケースでした。
※青地とは別に、農業振興地域内農用地に定められていない「区域外」の農地というのもあって、これは青地に対して「白地」と呼ばれます