住宅番組のMCを務めるほど家が好き。そんなアンガールズ田中さんが、昔ながらの江戸情緒漂う下町に立つ、築70年越え、わずか12坪の長屋をリノベーションしたお宅を訪問しました。住んでいるのは建築家の市江龍之介さん夫妻です。玄関を入ると、目の前に広がるのは明るくて開放的な土間空間。田中さんも歴史を感じる柱や壁に、めっちゃそそられています。

長屋の前でアンガールズ田中さん
これが建築家の市江さんが住んでいる長屋。戦前から立っていたといううわさも…
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購入したのはかなり傷んだ築70年のちっちゃな長屋

江戸時代の町名が今も残る昔ながらの住宅地の路地の奥に、市江さん夫妻が住む長屋があります。

この物件を見つけたのは、妻でした。「更新時期が迫り、ネットで賃貸マンションを探していたときに見つけたんです。道が狭くてクルマが入れないから静かでいいかな、と」。

見に来てみたら、建物の傷みがあまりにひどく妻は消極的でしたが、古い建物の改修を手がけた経験のある市江さんは気に入り、購入することに。

「不動産会社からは戦後すぐに建ったと聞いているので築70年以上。でも、向かいのおばあちゃんは戦前からあるって言うんです」と市江さん。「すごいな。焼け残ったんだ」と田中さんも驚いた様子。

 

アンガールズ田中さんと市江龍之介さん夫妻

【この住まいのデータ】

  • ▼家族構成
    夫36歳 妻36歳

    ▼住宅の面積
    敷地面積/39.10㎡(11.85坪)
    延床面積/55.39㎡(16.78坪)
    1階/31.10㎡(9.42坪)2階/24.29㎡(7.36坪)

 

玄関を入ると、広々とした土間空間が!

広々とした土間空間

狭い路地に面した敷地は約12坪。長屋のため東側は隣家と壁を共有し、西側の隣家とは屋根を共有しています。このような環境から「町や路地とダイレクトにつながりたい」と考えた市江さんは、1階に玄関から続く土間のDKとフローリングのリビングを配置。中央に大きな吹き抜けを設け、寝室や浴室などを配した2階とつなげています。

「もとは天井が低くて薄暗かったと思うけど、明るいし、当時はいなかった僕のようなサイズの人間でものびのび過ごせるのはすばらしい!」と、田中さんも大らかな空間に生まれ変わった長屋を大絶賛です。

 

リビングにはコンパクトながら収納もたっぷり

リビング壁面にはL字型の本棚

土間のDKからフローリングのリビングへ。リビング壁面にはL字型に本棚とデスクを設置。下部の棚はベンチ兼用です。

 

土間空間に設けたオープンな階段

路地から続く通り庭のような土間空間に設けたオープンな階段。壁の仕上げはラワン合板で、「材料は一緒だけど板の色がバラバラ。町の中の色もバラバラなので、パッチワークのようにいろんな色を取り入れました」(市江さん)。

 

トイレ

階段の先に設けられたトイレは、収納を兼ねたスペース。

 

間取り(リノベーション前後)

リノベーション前

リノベーション前

リノベーション後

リノベーション後

DK以外はすべて和室だった3DKの間取りを、仕切りのない大らかな住まいにフルリノベ。中央に大きな吹き抜けを設け、各スペースが螺旋状に連なる構成になっています。

玄関から2階の「ハナレ」まで一筆書きのように移動でき、空間をくまなく活用できるのがポイントです。

 

この家には新品より古いものの方が似合う

キッチン

路地側に設けられた小さな庭に面したL字型のキッチンは、コンロや水栓などの設置はプロに依頼し、本体の組み立ては市江さん夫妻が自主施工。

L型キッチンはコーナー部分が使いにくいため、左手の作業スペースの奥行きを浅くして、奥まで使いやすくしています。下部は食器収納に。正面のガラス棚は、2階で使われていた建具の型ガラスを再利用しました。

「ゲタ箱や本棚などもDIY。けっこうお金の節約になるんです」との言葉に、「それは大事(笑)。キッチンは広くて使いやすそうだし、建具の型ガラスを再利用した収納もすてき」と田中さん。

「この家には新品より古いものの方が似合うんです」と妻も気に入っている様子。随所に散りばめられたレトロな家具や雑貨も、空間に調和しています。

 

革ひもを使った引き出しの取っ手

田中さんが注目したのは、革ヒモを使った引き出しの取っ手。経年変化を楽しみたい、という理由で使用。

 

2階にはライブラリーやワークスペースが!

カーペット敷きのライブラリー

通り庭のような土間に設置されたオープンな階段をL字型に上った先にはカーペット敷きのライブラリーがあり、2階南側の寝室につながっています。

ブルーのカーペットが敷かれた部分は、ソファと階段兼用。正面はクローゼット。

 

ライブラリー

本棚の向こうはオープンな寝室。ライブラリーはゆるやかな階段状になっていて、腰かけて本を読むことができます。

寝室の部分は増築されていたそうで、田中さんは「いろんな人が、それぞれのタイミングで増築したりしながら住みつないできたんですね。それを受け継ぐのって、財産だと思う」と、この家の歴史にしばし思いをはせます。

 

通路としても使われる洗面&バスルーム

さらに吹き抜けに沿って2階を進むと、扉のない浴室や「ハナレ」が。「コンパクトな家なので、浴室ですら通路の一部。吹き抜けを中心にすべての空間を螺旋状につなげ、隅々までムダなく活用しています」と市江さん。路地を感じつつ、昔ながらの長屋を快適に住みこなしているようです。

 

寝室側から北側を見たところ

寝室側から北側を見たところ。左手の収納には洗濯機が隠されています。右手の吹き抜け側には手すりを兼ねる腰高の棚を設置。

 

ハナレにつながるバスルーム

田中さんが立っているのは、ハナレにつながるバスルーム。壁には光を通すポリカーボネート波板を採用。

 

バスルーム手前の洗面スペース

バスルーム手前の洗面スペース。「カーテンをつける予定でしたが、使ってみたらあまり気にならなかったのでそのままに」(妻)。

 

バスルーム

通路を兼ねているためバスルームは広め。タイルはDIYで。扉がないので、開放感たっぷり。

 

吹き抜けに浮かぶ小さなワークスペース「ハナレ」

ライブラリーからハナレを見たところ

ライブラリーからハナレを見たところ。窓は既存のまま使用しています。その下の壁で囲われた部分はこの家の唯一の個室であるトイレで、その隣はリビングの壁面に設置されたデスク。

 

ハナレの隅に設置された小さなデスク

ハナレの隅に設置された小さなデスクは、リモート会議などに使用。オープンなのに、仕事に集中できそうなスペースです。

 

玄関からの眺め

玄関からの眺め。奥の上部に吹き抜けに面したハナレが見えます。壁をなくしたことで、「ヤバいくらい暗かった」(市江さん)という1階も開放的な空間に。

 

アンガールズ田中さんの「そそられポイント」

アンガールズ田中さん

壁や天井に隠れていた柱や梁をあえて見せているんだけど、かなり古くて汚れていたから、手で触れるところは磨いたんですって。ボクは構造系出身なので、こういう味のある構造材、歴史を感じるし、めっちゃそそられます~。

 

プティ・フリチュールの照明

巨大なシイタケのようなペンダント照明は、フランスの「プティ・フリチュール」のものなんですって。大きいけど触ってみたらやわらかくて軽いから圧迫感はないし、あえて和の空間に合わせているところがおしゃれですよね。

 

長屋のバルコニー

古い柱にもロマンを感じました〜。

 

●お知らせ

田中さんが住宅雑誌『住まいの設計』で2018年から連載している「家好き芸人 アンガールズ・田中が行く!建築家の自邸探訪」が、1冊の本になりました。これまで田中さんが訪ねた個性豊かな20軒のお宅を掲載。加えて、田中さんの素顔に迫る新規記事も充実しています。

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