いつ起こるか分からない、両親の介護や死。突然、その両方を体験した約1年間の思いをつづった書籍、『父がひとりで死んでいた』(日経BP刊)が話題になっています。今回は、著者の如月サラさんに当時の様子についてお話しをお伺いしました。

突然、ひとり暮らしの父が孤独死。母は認知症で施設に

女性正面
『父がひとりで死んでいた』著者・如月サラさん
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コロナ禍で帰省がままならない中、離れて暮らす父親が実家で孤独死。その半年前には、母親が認知症でセルフネグレクト状態と診断されて専門医へ入院。短期間のうちに、予想もしなかったつらい出来事が次々に起こったことで、「自分のエネルギーが完全に奪われてしまった」というエッセイストの如月サラさん。

「それまで、親というのは少しずつ衰えて、最後は病院で看取るものと思っていた。だから心の準備ができていなかったんですよね。それが、ある日突然悲しみに突き落とされて、なにも考えられなくなってしまった。私は長く出版社で雑誌のエディターとして働いてきて、『自分は情報収集や判断が得意だ』という自負がそれなりにあったんです。でもあまりにもつらいと、そうした判断力や行動力が機能しなくなってしまうんですよね。原稿を書こうとしても『これからどうしよう…』と感情が引きずられてしまって、どうしても集中できない。そんな状態から抜け出すには、1年ほどかかりました」

●母の介護と実家の片づけをひとりで向き合うことに

父がほとんどの時間を過ごしていたダイニング
父がほとんどの時間を過ごしていたダイニング

 

「親をひとりで死なせてしまった」と自責の念に駆られながらも、母親の介護や実家の片づけ、残された猫たちのお世話…といった、現実的な問題にも直面することに。自身が住む東京と、実家のある熊本を行き来する生活が始まりました。

「私は独身で兄弟はいないので、あき家となった実家の片づけも一人でやるしかない。長距離移動にかかる時間やお金も負担となり、途方に暮れました。それに、私自身も年を重ねて、若い頃よりも体力が落ちている。自分の年齢も痛感させられましたね」

人形の写真
父の部屋の戸棚から出てきた人形

実家の片づけでは、作業そのものの大変さだけでなく、家族の思い出と向き合うつらさも痛感したそう。
「家族のアルバムを見られるようになったのは、父が亡くなってから1年後。それまでは、幸せな思い出が自分を傷つけてしまいそうで、怖くて開けなかったんですよね。それに、親が亡くなったばかりのときは冷静な判断ができず、大事なものまで手放してしまうことも。私の父は社交ダンスが趣味だったのですが、片づけのときにその衣装まで全部捨ててしまって。今思えば、何着か残しておけばよかったし、必要な方にお譲りすることもできた。状況が許すのなら、気持ちが落ちついてから片づけに着手するか、思い入れのないものから始めるとよいと思います」