間伐材の有効活用や再生可能エネルギーの導入などで、SDGs先進自治体として注目を集める岡山県西粟倉村。時事YouTuberのたかまつななさんが、行政とともに、村の課題解決に取り組む一般財団法人「西粟倉むらまるごと研究所」の代表理事・大島奈緒子さんに話を聞きました。

対談写真
時事YouTuberのたかまつななさん(左)と「西粟倉むらまるごと研究所」の大島奈緒子さん(右)
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よくなる可能性があるなら、やってみよう

バイオマス
村の面積の95%を森林が占める西粟倉村。間伐材の利用を推進し、村の新しい庁舎では、地域の木材のチップボイラーとコジェネ発電を採用している

たかまつ 西粟倉村(にしあわくらむら)は人口1400人の小さな村ながら、再生可能エネルギーへの取り組みなど、SDGsの先進自治体として注目されています。

大島 SDGsが叫ばれる前から進めてきたことが、ハマったのだと思います。村は「百年の森林構想」を掲げ、森づくりを進めてきました。バイオマスエネルギーにしても、CO2を減らすためというよりは、未利用材も価値にするためで、村の施設に薪ボイラーが導入されました。村の森林を「宝物」としたことが始まりなんです。

たかまつ それを、村全体で推進してこれたのは、どうしてでしょうか?

大島 役場や村の方々のご努力はもちろんですが、都市との違いを感じるのは、旗を振る人と実行する人が同じ、あるいは距離が近いということです。行動が未来を変えるという意識を持ちやすい。あとは、なにもやらないよりは、失敗してもいいからチャレンジをしよう、ということを声に出してくださる方がいるからだと思います。失敗しても元に戻るだけで、行動しない限りプラスにならない。やらなければただ人口が減り、森は荒れる。よくなる可能性があるならやってみようという人がたくさんいて、そこに仲間が集まる。これは西粟倉村のすごいところです。

たかまつ その村のなかで大島さんが代表を務める「むらまるごと研究所」は<テクノロジーは地域を幸せにするのか>をテーマにしています。具体的にはどんなことを行っているのですか?

大島 代表的なものでは、関係人口構築のための拠点やソフトの整備とオープンデータプラットフォームの構築です。森林データや雨量、水位などのさまざまなデータを収集し、活用できるよう進めています。村はベンチャー企業の立ち上げをあと押ししていますが、データがあることで活動が見える化でき、データドリブンな計画策定や行動変容につなげることができます。オープン化することで、村で研究や実証をしたいという研究者や企業を呼べるのではないかと考えています。

たかまつ 研究所がプラットフォームになるんですね。

大島 あとはローカルネットワーク構築や村内の送迎や物流を担う小型EV車の実証事業。少し苦戦していますが、農業分野をテクノロジーで持続可能な形にすることも取り込んでいます。

たかまつ 偏見かもしれませんが、テクノロジーに対する抵抗感はないですか。高齢の方などに新しい技術を受け入れてもらうのは大変そうです。

大島 データプラットフォームもEVの実証実験も、まだ器づくりやネットワーク整備の段階です。村の人の生活に関わるようになると、苦労はあるでしょうね。ただ今は高齢者でもスマホを使いますし、昔の携帯より感覚的に使えます。また人口が少ないですから、最終的には人海戦術ができる。それに、すべてを理解いただけなくとも、恩恵を受けていただければいいと思います。

たかまつ 人で解決するっておもしろいですね。

大島 「あの人に聞けばいい」という関係性でクリアできると早いですよね。

たかまつ むらまるごと研究所ができて、村はどう変わりましたか?

大島 これも、まだまだです。ただ、西粟倉といえば森林だったのが、「またなにかおもしろそうなことを始めているね」と言われるようになりました。企業研修で中長期的に関わる人や月の半分を村に滞在する人、インターンなど、時間・空間を超えた村民が集まるようになった。住民・移住者だけでなく、ゆるやかに出入りする人がもたらす風通しのよさは、価値になるはずです。

たかまつ 確かに、地域の活性化には「そと者」が必要といいますね。

大島 関係人口を都合よく使うのではなく、リアルな関係性をどうやってつくっていくかは模索しています。