料理研究家・てんきち母ちゃんさんの思い出弁当。愛情がたっぷりつまった「母の牛肉入りキンピラ」と「母の卵焼き」のレシピを当時の思い出エピソードとともにご紹介します。てんきち母ちゃんが母から受け継いだ懐かしの味、ぜひつくってみてくださいね。
すべての画像を見る(全2枚)てんきち母ちゃん思い出の「母の牛キンピラ弁当」
母のつくってくれた思い出の料理といえば、名もなき煮物です。
ゴボウ、シイタケ、レンコン、インゲン、ニンジン、大根、カボチャ…。冷蔵庫にある食物繊維たっぷりの根菜と緑黄色野菜、そこに薄切りの肉が入ったものが定番でした。砂糖とみりんとしょうゆで甘辛く味つけしてある、間違いなくおいしいけど名前はない、茶色い家庭料理です。
●お弁当は、母から受け継がれた子どもへの愛情の形
母のつくる肉ジャガには、メイン食材のジャガイモよりも存在感のある量のニンジンやインゲンなど色の濃い野菜や、シイタケやシメジなどのキノコまで入っていました。キンピラゴボウにも、当然ゴボウとニンジンだけではなく、さまざまな野菜が入っているので、もはやキンピラなのか筑前煮なのかわからない…いや、そのどちらでもない、というのがわが家のキンピラです。
お弁当にもこの煮物たちは必ず入っていて、これと甘い卵焼き、冷凍のコーンコロッケ、ブロッコリーを焼いたものが定番おかず。私はこのお弁当を、社会人になって結婚するまで毎日つくってもらっていました。
あれから26年。今は自分が家族のための弁当をつくるようになって、この具だくさんな煮物は、これ一品で栄養バランスがとれて彩りもいい、そして朝のあわただしいときにもこれさえ冷蔵庫にあれば大丈夫! 的な、安心&優秀おかずだったのだなと気がつきました。
大学生になった娘たちは、外食が続いたりすると今でもたまに私のお弁当を食べたがります。この先もつくってよと言われれば、きっと彼女たちが社会人になってもつくってあげると思います。かつての私がそうだったように。