●早期からの緩和ケアはどこで受けられるのか

西智弘先生
西智弘先生
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全国に405カ所あるがん診療連携拠点病院(※)には緩和ケアチームや外来が設置されています。
「がん診療連携拠点病院などを探す」(国立がん研究センターがん情報サービス)

そのほかの病院でも基本的な早期からの緩和ケアは、がんの治療医や腫瘍内科医、看護師などから受けることが多いのですが、患者さんががんと診断されたことによる精神的なショック、副作用の苦痛や、支える家族が感じる苦労などを治療中にじっくりと聞いてもらう時間や機会は少ないのですね。そして、緩和ケア専門の科や医師は、がんの治療を行う全国どの病院にもいるわけではありません。

そこで、早期からの緩和ケアの外来を設置している病院の全国情報を調べて、患者さんが探しやすいようにウェブサイト「早期からの緩和ケア外来Web」で公表しました。緩和ケア病棟(ホスピス)を設置している457施設にアンケートを行った回答と、各施設のウェブサイト情報も加えたところ、計209施設で早期からの緩和ケアを外来で受けられることがわかりました。

早期からの緩和ケア外来Web

https://pluscarekanwa.jimdofree.com/

「早期からの緩和ケア外来Web」では、受診にあたって確認したい項目も病院ごとに掲載しています。がんと診断されて治療を受けている病院に専門の緩和ケアが設置されていない場合や、自宅の近くなど通いやすいところで受けたいという方が探しやすく、より緩和ケアにつながりやすくなると考えています。

現時点では緩和ケア病棟が設置されている病院の外来だけが掲載されていますが、これからそのほかの病院や診療所なども加えていく予定です(訪問診療は除く)。
早期からの緩和ケアを外来で行っている施設の方は、ぜひ連絡していただきたいと思います。

ウェブサイトに載っていないけれど「早期からの緩和ケアを外来で行っている」という医療者や施設の方は、このリストをさらに充実させ患者さんたちに届くように、ぜひご連絡いただきたいと思います。

●外来の緩和ケアではどんなことができるのか

西智弘先生
撮影:幡野広志

がんの治療を受けている病院が自宅から遠いという患者さんもいらっしゃるでしょう。治療中に痛みがひどい、気になる症状があるなどすぐに診てほしいというときに、自宅近くの緩和ケア外来で診察してもらえれば、応急処置ができるケースもありますし、治療病院と連絡を取って判断できることもありますから、患者さんやご家族の安心につながると思います。

治療中に患者さんが弱音を吐けないというお話も聞きます。治療や検査に前向きな姿勢でいないと医師から見捨てられるんじゃないかという恐怖を感じたり、自分のためにがんばっている家族にネガティブな話がしづらくて、心が弱っているときに話し相手がいない、相談できないのだそうです。そういうときに緩和ケアの外来では、専門医や看護師が悩みや苦痛を和らげることを一緒に考えます。

がんの治療をする医師が緩和ケアについて十分な知識を持っていないこともあります。「緩和ケアは終末期のものだから、あなたはまだその段階ではありませんよ」と主治医に言われたというケースも聞きます。治療を受ける病院以外で緩和ケアを受けられるところを知っていれば、主治医に具体的な病院名を言って紹介状を書いてもらうこともできます。

治療は続けたいけれど、そのためにご自分が大切にしていることをあきらめたり、苦痛をがまんしなくていいように、がんと診断されたときから緩和ケアを受けていただきたい。患者さんやご家族が自分らしく生きていける手助けになると、私は考えています。

 

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