●本が売れてようやく家族の理解が得られた

――ご家族の反応はいかがでしたか?

会社員と料理研究家としての二束の草鞋を履くことを決意しましたが、最初は夫の理解が得られず苦労しました。熱心に料理し、写真を撮り、パソコンに向かう私の姿を夫は冷ややかな目で見ていました。

ブログの作業はおもに土日にしていました。当然ながら子どもといられる時間も短くなる。「もうそんな活動はやめて、会社員の仕事に専念しなよ」と言われることも。夫の私への評価はシビアでした。

そんな夫の考えが変わったのは、1冊目の本『つくりおき食堂の超簡単レシピ』(扶桑社刊)を2018年に出させてもらってから。これまで、あやふやなものに見えた活動が、はっきりと目に見える形になったことで、料理研究家としての活動を応援してもらえるようになりました。初の著書は17万部突破の大ヒット。コツコツと積み重ねてきた努力が実った形になります。

 

●子育てが犠牲に…料理家一本で進む決断を

――会社員と料理家の二足の草鞋、そして子育て、大変だったのではないでしょうか?

子どもと過ごす時間を犠牲にしたことは否めません。すごく印象的なのが、保育園の一学年下の赤ちゃんがハイハイしているかわいらしい姿を見て、自分の2人目の子がハイハイしている姿を思い出せない、と気がついたときのこと。「いつの間にか、娘はもう歩いているのに、ハイハイしている姿をまったく思い出せない」って思ったら、会社に向かう電車の中で号泣してしまいました。料理の活動に夢中になるあまり、娘の大事な瞬間を心にとめて置かなかったと感じすごくショックでした。それからはもっと子どもの成長に心を向けようと反省しました。

そのことをきっかけに「会社を辞める」という最大の決断をしました。子どもが学校に行っている時間に集中して料理に取り組み、夜や土日は子どもと過ごす、という生活サイクルを過ごすように。家族は応援してくれるだけではなく、大切な気づきにもなってくれています。