小さな敷地でも、周りを家で囲まれているような敷地でも、中庭をつくれば、明るくて開放感のある家を建てることが可能です。自然を身近に感じたり、LDKとつなげておうち時間を楽しんだりもできる中庭。そのメリットとデメリット、快適な中庭プランを実現するポイントを、一級建築士の飯沼竹一さんが、詳しく解説します。
すべての画像を見る(全16枚)建物や塀に囲われた中庭は、防犯上のメリットも大!
中庭とは、建物や塀に囲われた屋外の庭のこと。囲まれているので、上から見るとコやロの字のようになります(もちろん、建物や塀の形次第で変わる)。採光や通風、換気の役割を果たし、ライトコート(光庭)という言い方をする場合も。
この中庭に面して窓を設けることで、リビングはもちろんのこと、浴室やキッチン、廊下などにも光を入れたり、風を通したりすることが可能になります。
周辺から隔絶された半屋外のプライベート空間なので、外部からの侵入が難しく、防犯上もメリットも大です。
この中庭を持つ都市型住宅を、一般にコートハウスといいます。では、さっそく、快適な中庭のある家(コートハウス)を建てるポイントを解説していきます。
自然を身近に感じる、プライバシーが保てることが魅力
中庭のあるプランにすることで、たくさんのメリットがあります。まずは中庭のある家を建てることで実現できることを、整理してみましょう。メリットは大きく分けて、2つあります。
【居住性とプラン上のメリット】
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●都市部の建物が密集した敷地でも、開放的な庭(屋外エリア)を設けることが可能
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●リビングダイニングとつなげると、広く開放的な住空間がつくれる
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●小さくても植栽を施せば、自然を身近にできる。太陽や雲の動き、雨音などにより、「時の移ろい」を感じられる
【防犯&プライバシー上のメリット】
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●外からの視線がさえぎられた空間なので、部屋着のままランチしたり、星空の下でたき火したり、アウトドアリビングとして活用したりできる
●壁や塀に囲われているので、外部から中をのぞかれにくく、防犯に適している。周囲の目を気にせず洗濯物を干せる
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●部屋と同じ、周囲が閉じられた空間なので、子どもを遊ばせていても安心。夏場のプール遊びにも最適
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●近隣からの音も気になりにくい。ペットもリードなしで一緒に過ごせる
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●中庭に面する窓には、プライバシーのためのカーテンブラインドは不要。浴室を中庭に面してつくれば、露天風呂のようなバスタイムを過ごせる
壁の面積が増えるので、建築コストはアップする
メリットの多い中庭ですが、デメリットも理解しておきましょう。
通常の箱型の住宅と比べると、建築費は上がります。その理由は、中庭も壁に囲われているので壁の面積が大きくなり、構造材や仕上材などの建材費が増えるからです。また、施工費用や時間が余計にかかることも。
そして、壁に囲われた空間構成なので、場合によっては雨水がたまりやすく、水はけや排水設備にも注意が必要になります。
これ以外に、敷地が小さい場合では、中庭をつくると屋内の居住部分がその分、小さくなることもあります。位置や大きさ、向きなどをよく見極め、屋内スペースの間取りに柔軟性を持たせるなどの工夫と検討が必要です。
それでは筆者が手がけた、中庭のある住まいを紹介していきましょう。
Case 1:2階に設けたリビングダイニングと一体になった中庭プラン
こちらは2階にフラットな床で計画した、中庭の例です。窓を全開することで、LDKと一体的に使える、明るく開放的な空間が生まれました。
人が多く行き来する参道に面した、約30坪の敷地に建っています。周りは店舗や住宅、アパートが密集していて、西側の前面道路以外は建物に囲まれていて、住環境としては不利な場所。
建主の希望は、ここにプライバシーが守られた、開放的でバーベキューもできる庭つきの家を建てたいというものでした。
そこで1階に各個室と玄関、収納、ガレージを配置し、2階にリビングダイニングと中庭を一体で計画しました。
中庭は2階に設けていますが、南側には敷地境界線いっぱいに3階建ての建物があり、隣家が迫っている環境。そこで、高い壁を立ち上げて、圧迫感のあった建物は視覚的に消しました。
壁の上の青空だけが見え、視線が抜けていくようになりました。夏場は光も降り注ぐ気持ちのいい屋外空間になっています。
こちらは、反対側から見た写真。プライベート感は抜群で、建主の家族は年じゅう、外ごはんを満喫しています。
LDKの奥にある浴室も、中庭に面しています。ですから浴室も明るく開放的。周囲の視線を感じることなく、露天風呂感覚で入浴できます。